#771
ブライダルが突然現れた人物にほうを見る。
そこには、白髪交じりの初老の男性が立っていた。
「メントリン……。あんた……どうしてこんなとこに……?」
ブライダルがメントリンと呼んだ男性にか細い声で口を開いた。
メントリンは二ヒヒと笑うと、彼女に声をかける。
「立派になったな、ブライダル。あの泣き虫の小娘が、見違えたぜ」
メントリンがそう言うと、ブライダルの周りの景色が変わっていく。
そこは彼女がまだ幼いときに、バイオニクス共和国の研究施設から脱走し、メントリンに育てられたある町の光景だった。
ブライダルは周囲を見回しながら戸惑う。
メントリンはそんな彼女の肩に手をやった。
「もういいんだ。お前はもう十分やった。ゆっくり休めよ」
「メントリン……」
――今から五年前。
バイオニクス共和国のとある研究所で行われた
そのときはまだブライダル、ウェディングの他にも多くの少年少女がいた。
だが、次第に命の危険が
その後、担当者がカシミア·グレイへと変わり、実験結果で好成績を出していたウェディングとブライダルは特に可愛がられた。
待遇も一変し、当時九才くらいだった二人もようやくまともな生活を送れるようになっていたのだが――。
「ねえ、ブライダル。今度から私たちも学校に通えるようになるんだって」
ウェディングが嬉しそうにブライダルへと言う。
だが、ブライダルの顔をしかめた。
彼女はカシミアには感謝はしていたものの、こんな国にいたらいつか殺されると思っていたのだ。
ブライダルは待遇も改善されたこともあり、その自由を利用してここから逃げようとウェディングを誘ったが。
彼女には断られてしまう。
「私は、カシミアを裏切れない……」
それがウェディングの言葉だった。
ブライダルは彼女のことを諦めると、一人で研究施設から――バイオニクス共和国から逃げ出そうとした。
与えられた自由をすべて脱走をする方法を調べるのに当て、彼女はついに国から出る船に乗り込むことができた。
あとは船が国から出るまで隠れているだけだ。
ブライダルがそう思いながら、貨物船の荷物の中で縮こまっていると――。
「やっと見つけたわよ、ブライダル」
「カシミアッ!?」
ドローンを引き連れたカシミアが彼女の前に現れたのだった。
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