#746

ジャズの目に入った映像には、黒い光――エレメント·ガーディアンと戦っている彼女の姿だった。


そこには、これまでの旅で起きたこと――。


サーベイランスの出会ったイノセント·パッケージ·シティや他の町での戦闘が映し出されている。


「メディスンさんッ! なんなのこれッ!?」


ジャズが声を張り上げると、傍でその映像を見ていたニコも大きく鳴く。


驚いているジャズを見たアンや、ブラッドとエヌエーが笑っている中、メディスンが映像についての説明を始めた。


このジャズの映像は、すべてサーベイランスが撮影したものだ。


あの機械人形はこれまでの旅をすべて録画しており、今観ているのはその映像を編集したものだそうだ。


「戦いばかりではないぞ。バッチリと君の発言も入れてある」


「えッ!?」


戦闘の映像が切り替わると、次にジャズがブライダルやサーベイランスに、この大災害やエレメント·ガーディアンから世界を救うために力を貸してほしいと叫ぶ場面や、ストリング帝国とオルタナティブ·オーダーの戦争を止めたいと、切実せつじつに言う彼女が映し出されていた。


どうやらサーベイランスはメディスンに内密で相談し、彼に今までの記録映像を動画編集して、世界中の電子ネットワークに流したようだ。


《英雄の再来ジャズ·スクワイアよッ! この命が続く限り、私はお前の友だ! そしてオルゴー王国は、ストリング帝国にもオルタナティブ·オーダーにも属すことなく、お前にのみ力を貸すことをここに誓うッ!》


その編集動画には、ついこないだジャズたちが訪れたオルゴー王国のものもあった。


新しくオルゴー王国の女王となったレジーナ·オルゴーがジャズに向かって叫ぶ姿だ。


「サーベイランスの奴……。あたしに黙ってこんなものをッ!」


ジャズは顔を真っ赤にして顔を強張らせていた。


そんな苛立っている彼女とは違い、ニコは嬉しそうにその映像を見ている。


メディスンがフッと鼻で笑うと、ジャズへ言う。


「前からサーベイランスが温めていたプロパガンダだ。実際に反響も大きいぞ」


「でも、あたしなんかで各国の人に影響があるとは……」


「そこらへんもあいつは考えてる」


映像はさらに続く。


そこには、帝国の追撃やさらにはオルタナティブ·オーダーのリーダーであるライティングとジャズが話している映像――。


さらにはアンがジャズに協力するものや、ブレイクの姿も映し出されていた。


ヴィンテージの筆頭ひっとうであり、英雄であるアン。


そして、ハザードクラスに選ばれたバイオニクス共和国で最強と知られる少年剣士――くろがねのブレイク·ベルサウンド。


世界中で知られる二人がジャズに協力しているというのも、反響があるスパイスになっているとメディスンは言う。


「この映像が流れたことで、帝国からもオルタナティブ·オーダーからも離脱する者も出てきてるようだぞ。サーベイランス……。まったく恐ろしい奴だよ。でもまあ、味方になるとあいつほど心強い奴もいないな」


メディスンがそう言うと、ジャズはそのデバイスの前でヘナヘナと崩れていった。


そんな彼女を見て、その場にいた全員が笑っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る