#729

それからジャズたちは、ラヴヘイトが用意してくれた食事を取ることに――。


シンプルな野菜と米が入ったスープだったが、その味にジャズもブライダルも舌を巻いている。


「これ美味うまいね~。いや~さすがはハザードクラスだよ~。顔も料理の腕も良いなんて、さっすが最も優秀な人間に選ばれるだけのことあるよ~」


「うん、なんかこのスープ、優しい味って感じがする。ラヴヘイトってこんな特技があったんだ」


二人の言葉にラヴヘイトはフンッと鼻を鳴らす。


「単なるおかゆかリゾットもどきだよ。こんなもん、誰でも簡単に作れんだろうが」


謙遜けんそんというよりは呆れている彼の言葉を聞き、ブライダルが二ヒヒと笑みを浮かべてジャズのほうを見る。


「ジャズ姉さんには耳が痛いんじゃないの~?」


「うっさいッ! これでも前よりは上手になったんだからねッ!」


「だけどさ~そのペースだと、姉さんの料理が美味おいしくなる前に、世界の混乱を収めるほうが早いね~」


「あんたねぇ……」


拳を強く握ってプルプルと身を震わせるジャズだったが。


ブレイクが口を開いたことによって、彼のほうを向く。


「食いながらでいい、聞いてくれ」


それからブレイクは話を始めた。


その話とは、永遠なる破滅エターナル ルーインの教祖である、イード·レイヴェンスクロフトのいる場所についてだ。


彼がいうに、イードはここから数時間歩いたところで、規模は小さいながら野菜や果物を育てて暮らしているらしい。


それを聞き、ブライダルが茶化すように口を挟む。


「引退後はのんびり農業か~。セカンドライフにしてはありきたりだね~」


だが誰も彼女の言葉に反応せず、ブレイクも話を続ける


そこには、永遠なる破滅エターナル ルーインの幹部と思われる半分長髪で半分スキンヘッドの男が一人と、イードの息子――シン·レイヴェンスクロフトもいるようだ。


「ちょっと待ってよッ!? シンはあたしたちと一緒にイードと戦ったんだよッ!? それなのにどうして……?」


それを聞いたブレイクとラヴヘイトは顔を強張らせた。


ジャズは、敵の息子が味方だったということを知らない二人へイードと戦ったときのことを話すと、ブレイクが口を開く。


「そいつは初耳だったが。操られているって感じじゃなかったぜ」


「それでも、彼は……シンはあたしたちに協力してくれた……。きっと何か事情があるんだよ……」


ジャズが弱々しく答えると、サーベイランスが立ち上がった。


そして、その場にいた全員に向かって言う。


「ずっと聞いていたが……。まさかお前たち……。このままイード·レイヴェンスクロフトと戦うつもりか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る