#719

母親の姿に気を取られたレジーナ。


ジャズはその一瞬のすきを見逃さずに、彼女の身体を無理やりに押さえつける。


「何をするッ!? 無駄な足掻あがきをするなッ!」


「リュージュ女王が目覚めた。ここからはあなたたち二人の話し合いだよ」


効果装置エフェクトで機械化した腕で生身の腕を掴まれ、ガンブレードを振れずにいるレジーナ。


それと、剣の腕はジャズよりは上でも格闘術でいえばレジーナのほうがおとるのだろう。


足を足で絡められ、完全に身動きを封じられている状態になってしまっていた。


そんなジャズとレジーナを見て、リュージュが震えながら口を開く


「レジーナ……。あなたに謝らせてください。私は母としてとても褒められた人間ではなかった」


それからリュージュは、自分のこれまでレジーナに対してしてきたことを話した。


まだ子供だからと――。


好戦的でただ武器を持てばいいと考える娘のことを、ずっと相手にせずに向き合えずにいたと――。


「王としても……母としても……。私はダメな人間でした……。ガハッ! ゴホゴホッ!」


「母上ッ!?」


リュージュは口から血を吐いて咳き込んでいた。


だが、それでも彼女はレジーナへ謝罪の言葉を続けた。


すでに、意識も虚ろなのだろう。


あまり上手く言葉にできていなかったが、彼女の口にしていた言葉は、娘への想い――申し訳ない気持ちが伝わるものだった。


「くそッ! 離せッ!」


レジーナはガンブレードを捨てジャズを突き飛ばすと、母――リュージュ女王のもとへ走る。


そして、彼女の前にひざまくと、その細く枯れ木のような手を両手で掴んだ。


焦点の合わない目で娘を見つめるリュージュに、レジーナは叫ぶ。


「今さらなんなんですかッ! もう遅いんですッ!そんなことを言われたって……もう……遅い……んですよ……」


次第に弱くなる言葉を吐きながら、レジーナは涙を流していた。


それは、彼女が本当は母親に歯向かいたくないということの表れだったと言える。


「まだ、遅くない」


そんなレジーナの背後からジャズが声をかけた。


レジーナは涙を拭うと、彼女に喰ってかかる。


「貴様に何がわかるッ! 昨日今日この国へ来た人間などに、私の……私たちの何がわかるのだッ!」


ジャズは叫ぶレジーナに向かって、彼女のガンブレードを放り投げた。


そして、その身を固める。


「そんなのわかんないよッ! だけど、まだ遅くないことはわかるッ!」


ジャズはレジーナにガンブレードを拾うように言った。


レジーナは言われるがままにブレードを手に取ると、彼女のほうを見る。


「さあ、かかって来なさいッ! あたしが勝ったら、もう一度この国の王女として……リュージュ女王の娘としてやり直すんだよッ!」

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