#716

レジーナの兵隊の後ろから現れたのは、オルゴー王国の街にいた盲目もうもくの少年剣士だった。


ブライダルがこれはまずいと思いながら身構えると、彼女と同じように兵たちも動揺している。


「あれ? フード君はそっちの味方じゃないの?」


「オレはただ人に会いに来ただけだ。捜していたヤツがこの宮殿にいるって聞いてな」


「ほうほう、人捜しですか? でもまあ、よくこの騒ぎの中に入って来たね~」


ブライダルがそう言うと、フードの少年が杖にしていた木刀を抜く。


動くなと叫び、銃を向ける兵たちへ少年は木刀を振り抜いた。


すると、彼の周りにいた兵たちが一瞬で打ち倒される。


「おいヤシの実頭。ジャズ·スクワイアはここにいるんだろ? あいつにテメェの友人の兄貴が会いに来たって連絡してくれよ」


「えッ? フード君って、もしかして姉さんのお仲間?」


――その頃。


宮殿内にいた非戦闘員たちを避難させたサーベイランスは、ジャズが向かったリュージュ女王のいる部屋へと急いでいた。


すでに宮殿内の廊下にはレジーナの兵が入って来ており、残っていた護衛ごえい兵らと激しい戦いを繰り広げている。


「遅かったか。だが、ブライダルの奴が足止めしていればこれ以上数は増えまい」


反重力装置アンチグラビティで重力操作をしながら、上下左右に飛んでその戦闘の中を抜けていくサーベイランス。


彼にはわかっていた。


おそらく、すでにレジーナ自身がリュージュの部屋にいることを。


何せこんな乱戦状態だ。


レジーナ王女は進んで先陣を切るような好戦的な人物。


すでに部屋に辿り着いてジャズと戦っている可能性は高い。


「さて、どうするジャズ·スクワイア。話し合いの場は作れても、母親のほうは眠ったままだぞ……」


飛び交う銃弾を避けながら、サーベイランスがポツリとそう呟いた。


「また会ったな、ジャズ·スクワイア。やはり貴様は私の邪魔がしたいようだ」


サーベイランスの想像通り――。


リュージュの部屋に来ていたレジーナは、ジャズと向き合っていた。


彼女はジャズに向かって落ち着いた様子で口を開いたが、その顔は激しく強張っている。


「では、始めるとするか。さっさと武器を構えろ」


「待ってレジーナ王女ッ!? あたしはあなたの邪魔をしたいわけじゃない! ただリュージュ女王と話し合ってもらいたいだけなんだよッ!」


ジャズはガンブレードの刃を向けてくるレジーナに向かって、自分の想いうったえた。


リュージュ――あなたの母親は、これまでのやり方に間違いがあったことを自覚した。


そこで自分は、もう一度母と娘で話し合って、この国のことを考えるんだと伝えたと。


「リュージュ女王が目を覚ましたら、そのときにあなたの話を伝えればいい。だから、武器はもういらないんだよ!」


「母が私の話を聞くと思うのか? その女はな、これまで何度も私のことを無視し続けたのだぞ! 今さらそんな話が信用できるかッ!」


レジーナはそう言うとジャズに斬りかかった。


なんとか避け、後退した彼女にレジーナは言う。


「英雄の再来ジャズ·スクワイアよ。私を止めたければ力で来いッ!」

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