#676

ライティングはナノマフPIの残ったほうの腕でダブル·ブレードを払うと、ビームを乱射。


だが、マローダーはそれを弾きながら向かってくる。


「二人共やめてぇぇぇッ!」


そこへ一台のジープが飛び込んできた。


それに乗っていたのはジャズだ。


ジャズはマローダーの前に立つと、そのブレードの光の刃を腕で受け止めた。


亡き叔父ブロード·フェンダーの使っていた普通の人間がマシーナリーウイルスの適合者と同じ力を得るための腕輪バングル――効果装置エフェクトで機械化した腕でだ。


「ジャズ……。ジャズ·スクワイア……。こんなところにいたのか……」


「マローダー少尉ッ! あなたにはわからないのッ!? 今は人間同士が戦っている場合じゃないんだよ!」


ジャズはマローダーにそう言うと、次にライティングにほうを振り向く。


「ライティングだってそうだよッ! こんな戦いは無意味だって本当はわかっているんでしょッ!?」


ライティングはナノマフPIの腕を向けたまま、ジャズへ言う。


「それでもストリング帝国がやっていることは間違っている。ジャズ! 君のほうこそ、そのことがわからないのかッ!?」


ジャズは掴んでいたブレードを払うと、ライティングへと向き合った。


マローダーはその様子を静かに見ていたが、ブレードは構えたままだった。


「だからこそ話し合わなきゃッ! あたしから見ればオルタナティブ·オーダーだって帝国だって間違っている! だからってあたしが正しいなんていうつもりないよ。何が正しいかは意見の違う者同士で何度も議論して決めるんだよッ!」


ジャズの叫びに、マローダーが口を開く。


「すでに互いに血を流し過ぎた……。失った者も多い……。それで話し合いなどできるはずがないだろう」


「そんなこと言ってたらいつまでも終わらないよッ! 今世界はエレメント·ガーディアンの脅威に襲われてるんだッ! そんなときに争ってどうするんだよッ!」


「……甘い正論。それでいて中途半端な信念だな」


「たとえ甘い正論だって……。それでも叫ばないとみんな笑顔になれないじゃないッ!」


「お前の言葉は借り物ばかりに聞こえる。もういい、今日は喋り過ぎた」


マローダーがジャズへと襲い掛かる。


振り落とされたブレードを機械の腕で弾くが、マローダーの勢いは止まらない。


「あなたの言う通り……。あたしの言葉は借り物かもしれない……。けどッ!」


ジャズは強引に間合いを詰め、マローダーの身体を突き飛ばす。


後退させられたマローダーは、再び前へと向かおうとすると――。


「これが今のあたしがやれること……。ブロード叔父さんやクリーンのおかげで生きているあたしができることなんだよッ!」


ジャズは効果装置エフェクトで機械化した状態を解除し、その両腕を広げて見せた。

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