#672
ジャズに無理やり振り向かさせられたライティングは、彼女の手を払う。
そして、Nano Muff Personal Insight(ナノ マフ パーソナル インサイト)通称ナノマフPIに乗り込んだ少年少女らに告げる。
「ストリング帝国軍の部隊がここを見つけたみたいだ。また君たちの力を貸してくれ」
ナノマフPIに乗っている子供たちは、ライティングに向かって
当然だ。
自分たちの大事なものを守るんだ。
あなたが与えてくれた力があるから自分たちは戦える。
ストリング帝国の好きなようにさせてなるものかと、マシンのハッチを開いて叫んでいた。
「これでわかっただろう。ボクが彼らを無理やり戦わせていないってことが」
目の前に並ぶナノマフPIを見て立ち尽くしているジャズへ、ライティングが言葉を続ける。
「皆、もうただ怯えるのはごめんなんだ。かといってボクやリーディン、トランスクライブ、メモライズが、
ライティングがジャズのほうを向く。
「ボクは彼らに訊ねた。もし、君たちに守りたいものがあるなら、理不尽な世界を変えたいなら、ボクがその力と知識を与えると……。それは、ノピア将軍がボクにしてくれたことでもある」
「だからって……。たとえ自分から手足を失う覚悟あるっていったって……。そんなの間違ってるよッ!」
「間違っているだって? 君はどうしてそう思うんだ?」
「ライティング、あなたは大事なことを忘れてる。あのマシンに乗った子供たちは、自分でそれを選んだのかもしれないけど……自ら望んで手足を失っているわけじゃないんだよッ!?」
ジャズは言う。
ライティングもそうだったはずだと。
仲間を守るために四肢を切断してナノマフPIに乗り込んだのは、そういう選択しかなかっただけで、けして望んだわけではないはずだと。
かつてあの機械に乗って戦わざるえない状況になった男へ訴えかける。
「それは子供たちの意思じゃないよッ! 極限状態であんなものを差し出されて選べって言われたって……それを本当に選んだって言えるのっ!? そんなの、強制しているのと変わらないじゃないッ!」
「それは、弱い者は永遠に奪われ続けろということかい? ただひたすら不条理に耐え忍び、自分たちを救ってくれる者が現れるまで泣いて暮らせということなのかい? ねえジャズ、答えてくれよ」
「あたしが言いたいのはもっと別の方法があるってことだよッ! もっとみんなで知恵を出し合えば、手足を失ってまで殺し合いをする必要がない方法が、絶対にあったはずなんだッ!」
ジャズは声を張り続けていたとき、一人の少年兵がライティングに耳打ちをした。
すると、ライティングはジャズへ背を向け、ここまで運ばれてきたナノマフPIへ歩を進める。
そのマシンは他のブルーのナノマフPIとは違う――真っ黒なカラーリングが施されていた。
おそらくライティング専用機なのだろう。
「……悪いけど、時間だ。ボクも彼らと戦場へ行く。君はここで待っていてくれ」
「ライティングッ! あなたまでこんなものにッ!? ダメだよッ! こんな悲劇しか呼ばないマシンなんて使っちゃダメェェェッ!」
だがジャズの声も空しく、ライティングは少年少女を乗せたナノマフPIを連れてその場から飛び出して行ってしまった。
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