#649

コーダとネアの目の前で、スピリッツの胸から血しぶきが飛び散って、その身体が崩れ落ちる。


そして、倒れた老兵の後ろには、舞う宝石ダンシング ダイヤモンドウェディングが立っていた。


「え、うそ……スピリッツ少佐……?」


「くそったれがぁぁぁッ!」


ネアがポツリと呟くとコーダがピックアップ·ブレード持ってウェディングへ斬り掛かった。


だが、ウェディングはその一撃を両手の甲から生やしたダイヤモンドの剣で防ぎ、そのまま強引にコーダを押し飛ばす。


それからウェディングはネアへ剣を振り落としたが、彼女はなんとかこれをブレードで受け止めた。


「よくも……よくも少佐をッ!」


吠えるネアをウェディングは冷たい視線で見返す。


剣を受けたネアはそれを弾くと、ブレードを振り上げた。


しかし、ウェディングのほうが動きが早い。


ウェディングは落ちてくる光の刃よりも先にブラジリアンキック。


彼女の槍のような蹴りがネアの顔面に突き刺さり、彼女は遥か後方へと吹き飛ばされてしまう。


それからウェディングは、コーダやネア、まだ生きている帝国兵たちなど気にせずにプレイテックの扉を切り裂いた。


そして、車内にあった凍結機をこじ開けてクリーンの遺体を肩に担ぐ。


「このガキがッ! 今すぐぶっ殺してやるッ!」


コーダが再び立ち上がり、ウェディングに叫んだ。


だが、ウェディングは彼を完全に無視。


そのままクリーンを担いだまま、彼女が乗ってきたであろう自動二輪車にまたがる。


「逃がすかよッ!」


コーダは落ちていたインストガンを拾って電磁波を乱射。


ウェディングはそれをダイヤの剣でそれ切り払うと、バイクのアクセルを吹かしてその場から走り去っていった。


「くそッ! 少佐はッ!? スピリッツ少佐は無事かッ!?」


コーダは表情を激しく歪めながら、スピリッツの傍へ駆け寄っていたネアに声を張り上げた。


だが、ネアは何も答えない。


ただ動かなくなった老兵を抱いたまま。その場でうつむいているだけだ。


そんな彼女を見てコーダは理解した。


スピリッツは死んだのだと。


それからコーダは一人プレイテックに乗り込むと、去っていったウェディングを追いかけようとする。


「待って、コーダ……」


「なんだネア? 命令違反だとか眠てぇこと抜かすつもりじゃねぇだろうな」


コーダは運転席から不機嫌そうにネアへ返事をした。


コーダは思う。


後で処罰されようがスピリッツの仇は必ず討つ。


目の前で上官が殺されて黙ってたまるかと。


だが、ネアの答えは彼の予想していたものではなかった。


「私がそんなこと言うと思う? 私はあんた一人じゃあいつに勝てないって言ってんのよ」


「なんだよ、やる気じゃねぇか」


「当たり前でしょ。コーダ、今から私の言うとおりにして。あいつは……舞う宝石ダンシング ダイヤモンドは私たちで仕留めるッ!」

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