#528

ダブは体鳴楽器のようなシストルムを手に取り、イードの頭に突き刺す。


シストルムから出ている精神力で作った剣――サイキックソードで突き刺されたイードは、凄まじい形相をするとそのままバタンと地面に倒れた。


それを見たイードの弟子たちが慌てて師であるイードに駆けよろうとしたが、飛び出してきたソウルミューのブラスターハンドガンの光線で阻止される。


「オラッ! フライにされたい奴は前に出てみろッ! こんがりと揚げてやるぜ!」


ソウルミューが弟子たちを抑えている間に、ダブが倒れた父の額を目掛けてナイフを突き刺した。


ビクッと震えたイードは、両目を見開くとダブのことを見つめる。


「まさか……お前にやられるとは……」


そして、そのまま動かなくなった。


ソウルミューは二丁のブラスターハンドガンを弟子たちに向けながら、ダブのもとへ近づいていく。


「思ったよりもあっけなかったな」


ソウルミューはそうダブに声をかけたが、彼はそのままナイフを手放してその場に両膝をついた。


それからダブは両手でその端正な顔を覆い、声をあげて泣き始める。


ソウルミューは弟子たちへの警戒を緩めることなく、涙を流す彼にそっと寄り添おうとすると――。


「神具から加護を与えられても、お前の優しさは何も変わらぬな」


今、目の前で殺されたはずのイードの声が聞こえてきた。


俯いていたダブが顔を上げ、ソウルミューは辺りを見回すと、倒れている死体が消え、二人の目の前にイードの姿が現れる。


それを見たダブは、再びシストルムを握って突き刺そうとした。


だが逆に腕を掴まれ、あっという間に締め上げられてしまう。


「ダブッ!? クソったれがぁぁぁッ!」


ソウルミューが近距離からイードに向かってブラスターハンドガンを発射。


だが、翳された掌から放たれる光で防がれ、そのまま吹き飛ばされてしまう。


「何故……? 幻覚はシストルムの力じゃなかったのッ!?」


丸太のような太い腕を振りほどこうともがくダブがそう言うと、イードは説明を始めた。


元々神具はどれも同じ力を持っている。


しかし、その所有者――つまりは加護を与えられた奇跡人スーパーナチュラルが欲する物へと姿を変えるため、その者にあった力が強く出るようだ。


「お前やシンは最初の所有者ではないからわからないだろう。だが、本来の神具とはそういうものなのだ。すべての神具は、魂、力、空間、現実、時間、精神――それらを操ることができる。まあ、完璧に神具の力を引き出せればの話だがな」


「じゃあ、僕が見た未来も……奇跡人スーパーナチュラルなら全員見れるってこと……?」


「ほう、短時間でそこまで力を引き出したか。さすがは我が息子」


ダブに感心したイードは、さらに彼を締め上げた。


もはやダブはもがくことすらできなくなり、呻きながらその表情を歪めている。


「では、そろそろ行くとするか」


イードがそう言うと、じっとしているように言われていた彼の弟子たちが動き出した。


それぞれ倒れているシン、プロコラット、クリーンの三人を拘束し始める。


このままストリング帝国を去るつもりなのだろう。


弟子の一人が、小型の通信機を使って外部と連絡を取り始めている。


「ダブを離せよッ! このゴリラ野郎ッ!」


そこへ先ほど吹き飛ばされたソウルミューが、イードにブラスターハンドガンを突きつけながら叫んだ。

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