#497
訊ねられたブレイクとリーディンは何も答えることができなかった。
それは、少なからずサーベイランスの考え方に共感するところがあったからだった。
ブレイクは生まれたときから
その後、彼は故郷を滅ぼしてバイオニクス共和国へと渡り、暗部組織へとその身を落とす。
リーディンは物心ついたときには、テロ組織――
恋人であるライティングが自分と仲間のために犠牲になり、耐えきれなくなった彼女は神具である経典アイテルを盗んで脱走した。
その逃走中、リーディンは経典アイテムから啓示を受けて
だがそこでの事件後、彼女はブレイクと同じく暗部へと加入した。
暗部での生活は血生臭く、安心とは程遠いものだったが。
二人にとってそこは、生まれて初めて自分が必要とされる場所だった。
友人とは違うかもしれないが。
同じような境遇。
似たような痛みを持つ仲間ができた。
サーベイランスがいうゴキブリやネズミとは、自分たちのような人間のことを言うのだろう。
そして、自分たちは確実に明と暗――。
光と闇ならば、陽の当たらない場所のほうが居心地がよかった。
けして、ベクターが間違っているとは思わない。
しかし、考えるとこの芝居がかかった動きをする人工知能に反論はできない。
だが、ブレイクとリーディンにも――。
そんな闇の世界に染まった二人にも――。
守りたいものが存在する。
「お前とこのおっさん……どっちが正しいかなんて関係ねぇッ!」
「そうだよ! たとえあんたか言っていることが正しくたって、こんなところで殺されるわけにはいかないんだッ!」
咆哮するブレイクとリーディン。
サーベイランスは二人を見て口元を歪ませると、その宝石のような両目を見開いた。
すると、拘束されていた特殊能力者たちが自身の力を使い、縛られていた枷を外し始める。
「テメェ、なにをしやがったッ!?」
ブレイクが声を張り上げると、サーベイランスは肩を揺らして嬉しそうにその口を開く。
「また未来を見せてやったのさ」
「未来だと!?」
「そうだ。この子らは私の人工知能内にある装置――
テストチルドレンとは――。
バイオニクス共和国内にある研究所の被検体に選ばれた子どもたちのことだ。
実は共和国に住む学生のほとんどがテストチルドレン出身であり、その脳には記憶操作のチップが埋め込まれている(ロボトミー手術の応用)。
サーベイランスはそのチップに干渉、
「それでこいつらを……」
「ホント最悪ね。共和国って」
ブレイクとリーディンはこのときに――。
何故特殊能力を持つ子どもたちが自分たちを攻撃して来るのかを理解する。
それは、サーベイランスが悪夢のような未来を見せることで子どもらに恐怖を与え、目に映る者すべてを殺すように仕向けているのだと。
「ったく、せっかく大人しくさせたのに、またやり直しッ!?」
「文句いってんじゃねぇ! こうなったら何度でもやるんだよ!」
弱音を吐いたリーディンにブレイクがそう返すと、目の前にいた子どもらの次の行動を見て驚愕する。
「おい……なにしてんだよテメェらッ!?」
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