#485
「ちょっと!? だから俺は君たちの敵じゃないってばッ!?」
ミックスは向かってくる突風――刃のような風を受けながら叫んだが、子どもたちに何も反応はない。
しかも、風を避けようと動こうとしても、足が地面に張り付いて動けなかった。
機械化させた両腕でなんとか
「痛いって! ちょっとこれはマジでシャレにならないってッ! 死んじゃうよッ!」
必死で訴え続けるミックス。
だが、子どもたち内一人は動かずに手を翳したままで、もう一人のほうは少しずつ近づいてきていた。
風を操っているほうの子が距離を縮めるたびに、吹きつける突風の強さも増していく。
「くそッ! なんとか、なんとかしなきゃッ!」
子どもたちへの説得を諦め、ようやく状況を変えようと考え始めるミックスだったが。
いくら考えても何も思い浮かばない。
「あぁ、こういうことはいつもジャズやジャガーに頼りっぱなしだったからなぁ……」
ミックスはマシーナリーウイルスの適合者だ。
身体を機械化――
これまでも、自分以上に実力のある相手に一歩も引かずに戦ってきた彼だったが。
それは常にミックスの傍にいて、彼の力を引き出してくる仲間がいたからだった。
どんなに凄い能力を持っていようが、それを活かす頭のないミックスでは、今のように型には
風使いの子どもは、もうミックスの目の前まで来ていた。
吹き荒れる突風はすでにミックスの全身を包んでいる。
いくらマシーナリーウイルスの適合者が機械化できるとはいえ、全身を
当然そんなことをすれば暴走したウイルスが全身を
「このままじゃ……でも、どうしたら……」
全身を風で切り裂かれながら、呻くように言うミックス。
もし、相手が自分よりも幼い子どもでなかったら、ミックスも何か強引に手を出そうとしたかもしれないが。
彼は子どもへ手を出すことができない。
それは、ミックスの兄と姉からそう教えられて育ったからだ。
困った人がいたら助けてあげなさい――。
そして、自分よりも弱い人には絶対に暴力は振るわないように――。
ミックスにとってその二つは、もうずっと会えないでいる兄と姉二人との絆のようなものだった。
「敵を完全に捉えた。ここからは全力で仕留める」
「了解。こちらは油断せずに固定を続行する」
そして、風使いの子供が後ろにいる仲間に声をかけると、もう一つの手を前に出して両手をミックスへと向ける。
先ほどの言葉を真に受けるのなら、両手を翳すことで倍の風の刃を発生させるつもりなのだろう。
そうなったら、いくら
「もう……ダメだぁ……」
ミックスが諦めかけたそのとき――。
「諦めてんじゃねぇ、バカ」
突然聞こえてきた声と共に放たれた電磁波が、二人の子どもの身体を撃ち抜いた。
子供たちは身体を震わせながら、表情を変えることなくその場に倒れる。
ミックスは子どもが気を失ったせいか、足が動かせるようになっていた。
そして、声のするほうを見るとそこには、よく知っているボサボサ頭に男が立っている。
「ジャガーッ!」
「ったく、お前はホントに人が良いよな。自分が殺されそうになってもその調子だ」
呆れながらそう言ったのはミックスの同級生であり、バイオニクス共和国へとスパイとしてやってきた帝国将校――ジャガー·スクワイアだった。
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