#484

――ノピアとサービスがサーベイランスと対峙していたとき。


ミックスはジャズと別れ、一人アミノや同級生たちのことを捜していた。


人気のない裏通りを進み、自分が通っている戦災孤児の学校へと向かっている。


「アミノ先生たち……。もう逃げていてくれたら一番いいんだけど……」


弱々しく呟きながら駆けるミックス。


マシーナリーウイルスの力で両足を機械化させ、常人ではあり得ない速度で走る。


大通りでは今、ウェディングとリーディンが機械人形たちと戦っている。


そして、メディスン、ジャガー、ライティングたちがバイオニクス共和国の住民たちを避難させている状態だ。


避難チームが追ってくる機械人形の集団を引きつけている間に、ノピアらサービスの護衛チームがサーベイランスのところへ行くのがこの作戦の狙いである。


その作戦でのミックスとジャズに与えられた任務は、逃げ遅れた者たちを見つけて保護することだったが。


先ほど述べたように彼は、ジャズと別れて自分の身近な人間の安全を優先している。


それは、ジャズのような軍人からは考えられないことだったが。


彼女はミックスの自由を許した。


それは、ジャズがミックスたちとこのバイオニクス共和国で過ごしたことが影響していたのだろう。


そうでなければ、本国で堅物といわれていた彼女が、作戦を無視して勝手に行動するミックスを行かせるはずがない。


「見えた! 学校なんて久しぶりに見たな……って、今はそんなこと気にしてる場合じゃないッ!」


そして、学校へと到着。


ミックスはしばらく休学していた学校に懐かしさを感じながらも、校内へと入る。


それから廊下、教室などしらみ潰しに捜し回ったが――。


「誰もいない……。もうみんな逃げちゃったのかな? それならいいんだけど……」


人っ子一人いなかった。


ミックスはここに居ないのなら捜しようがないと思っていると、外から物音が聞こえてくる。


誰か逃げて来たのかと、窓から外へ飛び出してその音のするほうへと向かっていくと、そこには自分よりも幼い子どもが二人。


まるでゾンビのようにフラフラと歩いている姿が見える。


「もう大丈夫だよ。俺が安全なところに連れて行ってあげる」


ミックスが呼びかけたが、その子ども二人は返事をしなかった。


言葉を発せないほど怖い目に遭ったのだろうと、ミックスはその二人に駆け寄っていく。


すると、子どもたちがミックスに向かってそれぞれ手をかざした。


「うわッ!? なんだこれッ!?」


急に身動きができなくなったミックス。


上半身は動かせるのだが、足が地面に張り付て動かせない。


そして、次に突風がミックスの身体に吹きつける。


条件反射で身を屈めたミックス。


両腕で顔を覆い、その風から身を守る。


だが、風を受け止めた瞬間に両腕に痛みが走った。


「イタッ!? これって今の……?」


風がミックスの腕を切り裂いたのだ。


ミックスは腕から流れる血を確認すると、次に子どもたちのほうを見る。


「身体を機械化できる特殊能力者を発見。おそらくマシーナリーウイルスの適合者だと思われる」


「了解。排除開始、排除開始」


子どもたちは機械的にそう言うと、再び突風がミックスを襲った。

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