#482

ノピアがそう言った後――。


襲い掛かってくる機械人形に、ベクターがインストガンを放つ。


発射された電磁波が当たり、ノピアに届く前にその動きを止められる。


そして、ラヴヘイトが前に出ていき、機械人形の金属の身体をその拳で貫いた。


「では、ここは我々二人で抑える。ノピア将軍はサービスと共に、タワー内へ侵入してくれ」


ノピアは無言でベクターに頷くと、サービスのほうを見て背負っていたジェットパックを起動。


このまま外からアーティフィシャルタワー内へと入るつもりだ。


先に飛んでいったノピアを見上げたサービスは、次にベクターとラヴヘイトのほうを眺める。


彼女は何も言わない。


ただ、心配そうに二人を見ているだけだ。


「どうした? 早く行け。ここは我々が抑えると言っただろう」


ベクターはそんなサービスに声をかけたが、彼女は何か言いたそうな顔で見つめ返すだけだった。


サービスが何を思っているのかを察したベクターは、再び彼女に向かって声をかける。


「サーベイランスから共和国のシステム取り戻せるのはお前だけなんだ。もし、我々に対して罪悪感を覚えたのなら、必ず奴を倒してその感情を吹き飛ばせ。それでこっちは十分満足だ」


サービスは、ベクターの笑顔を見ると表情を真剣なものへと変えた。


そして、身体をゆっくりと宙へと浮かし、ノピアの後を追いかける。


その飛行速度は凄まじく、すでに先へ飛んでいたノピアの傍に、一瞬で辿り着いてしまった。


「いいか、サービス。まず私がサーベイランスに接触する。君は様子を見ながら接近し、奴を国のシステムから追い出してくれ」


「わかった。あたしが必ず……必ずサーベイランスを止める」


ビルの上層階へと飛んでいくノピアとサービス。


どの階にいるかはサービスから聞いていたのだろう。


迷わず、爆破後に破壊されて剥き出しになった階へと向かう。


それを阻止しようと、現れた機械人形たちはアーティフィシャルタワーの壁に張り付いてよじ登っていく。


集団のロボットが壁に張り付いてる様は、まるでホラー映画のワンシーンようだった。


金属が軋む音を鳴らしながら、口からデジタル加工された呻き声をあげる機械人形たちを見て、ラヴヘイトは不快な気分になっていた。


「うわ……気味がわりぃなありゃ」


「見てないであいつらを落とすぞ」


「いやでも、あの数はちょっと簡単にはいかねぇぞ」


「なんだ、ハザードクラスが弱音を吐くのか? 還元法リダクション メゾットの名が泣くぞ。俺の見込み違いだったかな。わざわざお前を監獄プレスリーから出したのは」


まるでからかうようにベクターがそう言うと、ラヴヘイトはムッとして眉間にしわを寄せる。


それから彼は、アーティフィシャルタワーをよじ登っていく機械人形の集団へと飛び掛かっていった。


「あんたの目が節穴ふしあなじゃなかったって、こいつらをぶっ壊して証明してやるよッ!」


ベクターは意気込んで叫ぶラヴヘイトを見ると、インストガンで電磁波を撃ちながらさらにその口角を上げた。


「ああ、証明してくれ。お前の力をそして意志を、この俺に見せてみろッ!」

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