#462

――それからなんとかミックスとジャズを落ち着かせ、各自わかれて行動することになる。


ミックス、ジャズ、リーディンは、ジャガーに共にサービスを隔離しているというバイオニクス共和国内にあるストリング帝国の大使館へ。


そしてメディスンとライティングは、再起動させたサービスを繋ぐ、共和国の電子ネットワーク環境を確保するための場所へと向かうことに。


ミックスたちが使う車は、暗部組織ビザール時代から使用しているたい焼き移動販売車だ。


「わぁ~、何から何までたい焼き尽くしだね」


「セーフハウスといい、車といい、なんでたい焼きなの……?」


ドアに可愛らしいたい焼きの絵が描かれた車を見て、嬉しそうにしているミックス。


隣にいるジャズは彼とは反対に、その顔をピクピクと引きらせている。


四人は車に乗り込み、街中を走る。


特に変わった様子もなく、気になるといえば誰も街を歩いていないことくらいか。


どうやらサーベイランスは、むやみに建物を破壊したりはしていないようだ。


「ねえジャガー。さっきのことはもういいけど、サービスをサーベイランスとの戦いに巻き込むのだけは絶対に反対だよ」


「もうわかったって。サービスを起こしたら掌握されたネットワークを解放してもらってそれで終いだ。その後はオレらで奴を倒せばいいんだろ」


二人はたい焼き移動販売車内で、まだ言い争いを続けていた。


とはいっても、ジャズが一方的に双子の弟であるジャガーに迫っているだけだが。


ミックスは助手席からそんな二人を一瞥すると、運転しているリーディンに声をかける。


「リーディンはまだ……サービスのことを殺そうとしてるの?」


「ワタシはあの子に助けられたんだよ。もうそんなことしない。それに、ワタシもあんたらと同じでサービスを戦わすのは反対だ」


「そっか、よかった。サービスもリーディンが仲良くしてくれたらきっと喜ぶよ」


彼女の答えに、ホッと安堵あんどの表情を浮かべるミックス。


答えたリーディンは、その内心で思っていた。


自分を呪いの儘リメイン カースへと変えた神具――経典アイテルからの啓示は、サービスのことではなくサーベイランス·ゴートのことだったのではないか。


だが、今のところ経典アイテルには何の反応もない。


となると、あのときの啓示は一体何だったのか。


リーディンはハンドルを握りながら、せっかくライティングと会えたというのに、余計なことを考えてばかりいる自分に嫌気が差していた。


(なんなのよホント……。もう一度彼に……ライティングに会えたのに……。どうしてこんなことが起きてんだよ……)


険しい表情をするリーディンに気が付いたミックスは、彼女に声をかける。


「大丈夫? なんか顔色悪いけど」


「なんでもない。それより、もうすぐ到着するよ」


リーディンはそう返事をすると、ストリング帝国の大使館にあった地下の駐車場へと車を走らせた。

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