#459
その後、改めてメディスンとの関係をジャズに説明するジャガー。
「つまりスゲー噛み砕いてカジュアルに言うとな。メディスンさんとノピア将軍は友だちなんだよ」
「いや、友だちってあんた……」
弟の言い回しに呆れるジャズ。
それからジャガーは、自分に与えられた極秘任務について話を始めた。
その話によると、彼はノピアの指示でバイオニクス共和国にスパイとして侵入し、メディスンの助力を得てミックスの通う戦災孤児の学校へ入学したらしい。
「でもそのくらいのこと、極秘することもなかったんじゃない?」
「あのなぁ、ジャズ。メディスンさんは共和国の古株で、ノピア将軍は帝国の看板なんだぜ。そんな二人がコソコソ動いているのが知れたら、クーデターでも起こそうと勘違いされるだろ?」
「言われてみればそうかも……」
驚いていたのが彼女だけ(ミックスは興味がない)だったので、ライティングのほうはノピアからメディスンとストリング帝国の関係は聞いていたようだ。
そんな会話を聞きながら、ミックスは皿に乗ったたい焼きを頬張り、嬉しそうに唸っていた。
「ねえ、ライティング。ジャズは知ってたけど、こいつとも知り合いなの?」
「ああ、そうだよ。ミックスは頼りになる男さ。こないだの城塞での戦闘でも大いに役立ってくれたんだよ」
かなり重要な話の最中に、自分は無関係だと言わんばかりにたい焼きを食べ続けるミックス。
リーディンはライティングの言葉を聞いても、どうも納得できなかった。
(でもまあ、さっき迷わずジャズを助けに行った行動力は大したものだったし。前のときも適合者として凄まじい力を見せていたけど……。どうもこいつには緊張感がないんだよなぁ)
内心でぼやくリーディン。
たい焼きのあんこを口の周りにつけているミックスを見て、彼女はジャガーと同じく組織の同僚だったブレイク·ベルサウンドのことを思い出す。
(こんな能天気な奴がブレイクを追い詰めたなんて、正直信じらんない。でも、あいつはなんか
リーディンがそう思い直していると――。
「うまッ! このたい焼きマジでうまいよッ! みんな食べないの?」
「こんなときに……どうしていつも通りなんだよ、あんたはッ!」
「ギャアァァァッ!」
ジャズにまた頭突きを喰らって叫ぶミックスを見て、大きくため息をつくのだった。
そんな雰囲気の中――。
メディスンがコホンと咳払いをすると、その口を開く。
「君たちが来る前に街の状況を確認したが。どうやらサーベイランスは国内にあるすべての電子機器を操っているようだ」
メディスンの話では――。
サーベイランスはアーティフィシャルタワーでの爆発の後、すでに動き出しているようだった。
手始めに、まずは共和国内の電子機器、ネットワークを掌握。
街には公開会議に現れた機械人形や、エレクトロハーモニー社が造り出した人型の戦闘用ドローン――ナノクローンなどが蠢き、人間たちを捕まえているといった状況である。
(サーベイランスが動いているってことは……。まさかノピア将軍はッ!?)
メディスンの話を聞いていたライティングは、サーベイランスと戦っていたはずのノピアの消息が気になり、思わず俯いてしまっていた。
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