#460
「ライティング、君はどう思う? 率直な意見を聞かせてほしい」
俯くライティングにメディスンが声をかけた。
ライティングは慌てて顔を上げると、バイオニクス共和国から協力は得られないのかと訊き返す。
「メディスンさんが一緒いてくれるのもありますし、それがサーベイランスを倒すのに一番現実的だと思いますが……」
ライティングの考えでは、今回の公開会議を開いたベクターや、彼の部下であるイーストウッド――。
さらにハザードクラスの三人、ウェディング、フォクシーレディ、ラヴヘイトが戦いに加われば、いくらサーベイランスがこちらを数で圧倒していてもなんとかなるのではないかと言う。
だが、発言したライティング自身がわかっていることだったが。
サーベイランスによって共和国内すべての電子機器やネットワークが掌握されている今、ベクターたちと連絡を取ることは難しい。
「つーか、この店は大丈夫なの?」
リーディンが会話の空気を変えたかったのか、メディスンにたい焼き屋のことを訊いた。
何でもメディスンが言うには、この店はすべて自家発電器で電力を賄っており、外部からの電子ネットワークは許可していないものは入って来れない仕組みにしてあるらしい。
「だから私たちがここにいることは、サーベイランス側にはわからないはずだ」
「ここが普通に電波飛ばせるとこだったら、今頃持ってるエレクトロフォンから居場所を知られちまってるだろうからな。何もないってことはバレてないってことさ」
メディスンの話にジャガーが補足を加えた。
二人の話を聞いたミックスは、突然ハッと両目を見開き、その口を開く。
「じゃあアナログな道具で連絡を取ればいいんじゃないかな!? トランシーバーとかさ!」
得意気に声を張り上げたミックス。
だが、その場にいる皆は呆れ、ジャガーだけが静かに肩を揺らしていた。
「うーん、なかなか良いアイデアだが。たとえベクター長官がその道具を持っていたとしても、こちらからは連絡ができんなぁ」
メディスンはなるべくミックスを傷つけないように言うと、彼は今さらながら自分がおかしなことを言っていたことに気が付く。
ジャガーはそんなミックスの肩をポンポンと叩くと、彼に声をかける。
「だが、そんな状況を覆す方法はあるぜ」
それからジャガーは、たった一つだけサーベイランス·ゴートを止められる作戦について話を始めた。
それは、バイオニクス共和国上層部の一人であるアイスランディック·グレイが造り出した人造人間なら、共和国内にあるすべての電子機器やネットワークを取り戻せるというものだ。
そのアンドロイドは、現在はジャガーがとある事情から預かって管理していると言う。
つまりは、目には目を歯には歯を、人工知能には人工知能をということだろう。
だが、その案を聞いたジャズの態度は――。
「大丈夫なの? そいつもサーベイランスと同じ人造人間なんでしょ?」
「心配いらねぇよ。だってお前とミックス、あとリーディンもか。そいつとは何度も会ってる」
「あたしたちが? 知り合いに人造人間なんていたかなぁ……?」
ジャズがジャガーの言葉に首を傾げていると、リーディンは表情を強張らせていた。
そして、ジャズとミックスのほうへ顔を向けて言う。
「あんたらがワタシから守った幼女……サービスのことだよ」
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