#443

「随分と長いトイレね」


公開会議の会場の席へと戻って来たミックスにジャズが呆れながら言った。


ミックスは特に気にすることなく、席に着くとざわついていた会場が静寂に包まれた。


会場の中央にあった高い椅子のある席にはベクターが立っている。


「諸君、まずは今回の公開会議の場にお越しいただいたことに感謝する」


そして、彼の話から会議が始まった。


ベクターは簡単な特殊能力者の登録法――才能アビリティ条約について、会場に来ている者たちへ説明をする。


バイオニクス共和国上層部とで話し合った結果。


奇跡人スーパーナチュラル呪いの儘リメイン カースなどの特殊超能力を持つ者は、この共和国では登録することにし、新たに編成した組織バイオビザールで管理する。


管理といってもそこまで仰々ぎょうぎょうしいものではなく、つまりはバイオビザールは公務員となり、登録された者たちはそこで働くというもの。


ようは、以前は暗部組織だったビザールはバイオビザールとして国家公安警察となり、共和国の警察である監視員バックミンスターと共に、この国を守るようになるという話だった。


「だが、強制はしない。組織を抜けるのも個人の自由だ。今まで理由があって暗部に身を置かざるえなかった者にも制裁は加えない。しかし、バイオビザールの登録や指示なしで特殊能力を使用した者は、犯罪者として処分する」


ベクターは、マシ―ナリーウイルスの適合者、奇跡人スーパーナチュラル呪いの儘リメイン カースから――。


さらに共和国研究所の実験で生まれた超能力者たちを含むすべてが登録対象だと言葉を続けた。


それは世界中にいるすべての特殊能力者が、バイオニクス共和国によって管理されるということと同じだった。


ジャズは、その説明を聞いて拍子抜けしていた。


何故ならば、ベクターが今話していることは以前から世界中に知られていることだったからだ。


だが、政治に関心のないのミックスは、ベクターの説明を聞いて前のめりになって話に耳を傾けている。


「へぇ~、別に組織に入らなくていいんだ。これなら問題なさそうだね、ジャズ」


(まあ、皆が皆こいつと同じとは思わないけど。改めて説明する必要はあるんだろうなぁ……)


無邪気に言うミックスの顔を見ながら、ジャズは退屈そうに頷き返した。


ミックスには頷きつつも、彼女は当然問題なく終わるはずがないと考えていると――。


「ベクター長官。いくつか質問したいことがあるのですが」


(ほ~ら来た)


挙手をして立ち上がった男を皮切りに、集まった者たちが次々にベクターに訊ね始めた。

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