#388

ソウルミュー、ダブ、ミウム、ブライダルと四人の敵を前にしても、その余裕を崩さない。


そしてバーバリーは、先ほど蹴り飛ばしたブルースのほうを見る。


「ブルース、所詮は貴様も人の子。すべてを捨てて戦う覚悟がなかったのだな。いや、私に仲間を操られたら厄介だとでも考えたのか? どちらにしても息子を守りたかったということに変わりはないか」


バーバリーはそう言うと身構えている四人のほうへ身体を向けた。


「私は貴様とは違うぞ。私はすべてを捨てたッ! 我が師イード·レイヴェンスクロフトも、同門の仲間も、この世界を救うために私はすべてを捨てたのだッ!」


彼の全身を覆ているほとばしる黒い光がさらに舞い上がる。


その光はまるでバーバリーの感情と呼応しているかのようだった。


激しくうごめきながら、すべてをかき消そうと凄まじい勢いで放たれている。


一人声を張り続けるバーバリーへ、ミウムとブライダルはそれぞれレーザーガトリングガンとブラスターハンドガンを発射。


だが、黒い光がそれらを弾く。


「まだ私が喋っているだろうがッ!」


バーバリーは話している途中で攻撃されたことに激高。


握っていた体鳴たいめん楽器――神具シストルムを振り上げると、柄から光の剣のようなものが現れる。


「なんだよあれ? まさかあれもオーラってやつ?」


「いや、あれは精神力で作った剣だ。対象の神経に大量の精神エネルギーを放出することで行動不能にするために具現化した武器だろう」


ブライダルの言葉にミウムが答えると、ルーツーが補足する。


《いわゆるサイキックソードってヤツだな。おい、全員あの剣に気を付けろよッ! あれはメンタルガードでも防ぎ切れねぇッ! 当たれば神経に異常が出るか最悪一発で死んじまうぞッ!》


「なるほど、サイキックソードか。誰だか知らんが気に入ったぞ、その呼び名ッ!」


バーバリーがニヤリと笑うと光の剣となった神具シストルムを振り落とした。


その剣が振り落とされた軌道には、精神力で形を作った光が、まるで稲妻のように放たれる。


避けたミウムとブライダルは、後退していたソウルミューとダブに近づく。


「見る限りブルースはまだ生きている。私たちが隙を作るからお前たちは彼を助け出せ」


「ちょっと待った!? その、私たちって、もしかしてこのブライダルちゃんも入ってない!?」


「……? お前の他に誰がいるんだ?」


「勝手に頭数に入れるなよ! いくら私が不死身でも、頭の神経を切られたら再生できないかもでしょ!?」


ブライダルは喚き出したが、ミウムは気にせずにソウルミューたちへ声をかけ続けた。


彼女がいうに――。


ブルースにはバーバリーがシストルムを操って精神攻撃をしてくることがわかっていて、ソウルミューや自分たちを守るために自身のオーラで覆ってくれていたのだと言う。


「おそらくあいつの言葉を聞くに、すでに永遠なる破滅エターナル ルーインを裏切っているようだな。それでも信者たちが私たちを襲ってきたのは、シストルムの力を使ったからだろう」


「じゃあ、親父がオレたちを守ってくれたって言うのかよ……」


表情を歪めるソウルミュー。


心中が複雑そうな彼にミウムは語りかける。


「それが親というものなんだな……。実際に見るまでは信じられなかったが。自分の力を削ってまで家族を、そしてその友人を守ろうとした彼に、私は敬意を表する」


そして、ミウムはまだ喚いているブライダルの肩を叩くとバーバリーのほうへ体を向けた。


「だから今度はお前が守ってやれ。私たちがその手伝いはしてやる」


唖然するソウルミュー。


その隣ではブライダルがさらに喚き散らしていた。


「だからッ! 勝手に決めるなッ! 私は手伝うなんてひとっことも言ってないでしょッ!?」


「ゴチャゴチャ言うな。行くぞブライダル」


文句を言っていたブライダルだったが、ミウムが動き出すと、彼女と共にバーバリーへと飛び出していった。


「あぁ~もうッ! これじゃあ私のキャラが崩壊しちゃうよ~! 本当の私は内気な快楽主義者なのにぃぃぃッ!」

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