#387
向かってくる
「ルーツー、この建物の防衛システムにクラッキングできないか?」
ジェットパックで飛びながら進んでいくミウムが自分の機械の腕に付いた黒羊に訊ねた。
訊ねられた黒羊は今さらそんなこと訊くのかと、少々呆れながら基地内のコンピューターに無線電波を飛ばしてクラッキングを試みた。
《ダメだな。できないことはないが、時間がかかり過ぎる。今すぐに乗っ取れそうなのは通信設備だけだぜ》
「じゃあ、そういうことならこの建物の全部のスピーカーから音楽は流せる?」
《ああ、さっきエレクトロハーモニー社の研究所でソウルミューの奴の音楽プレイリストをダウンロードしておいたからそいつは可能だぜ。でも、音楽なんて流してどうすんだよ?》
話に入って来たブライダルへ訊ね返すルーツー。
そんなことしてどうするんだと、黒羊は不可解そうだ。
それはミウムも同じだった。
彼女としてはこの基地の防衛システムを乗っ取り、バーバリーを硫化水素のガスが充満する外へと放り出して、手っ取り早く倒せないかと考えていたのだ。
ミウムは、通信設備を乗っ取って音楽を流してもバーバリーを倒せないと、ブライダルの案に意味を感じられずにいる。
「音楽のパワーを馬鹿にするなよ。なんだかんだで役に立つんだから」
「そういうものなのか? まあいい。どの道、残るはバーバリーだけだ」
そして、ミウムを先頭にソウルミューたちは建物の奥へと進んだ。
そして、大広間に辿り着くと、そこには――。
「まだ入り込んでいた者がいたか。だが、すでに遅かったようだな」
先に進んでいったブルースがバーバリーによって倒されていた。
バーバリーの全身を纏っている黒い光――そして、その手には柄のついた枠に横棒が伸びる
「親父ッ!? 偉そうに飛び出して行ってなんてザマだよッ!」
ソウルミューは倒れている父親を見て声を張り上げた。
バーバリーはそんな彼を一瞥すると、体鳴楽器――シストルムを鳴らした。
すると、彼の全身を覆っていた黒い光が、その音と共に大広間が埋め尽くされた。
ソウルミューたちは身を固めたが、黒い光を浴びても何の影響も受けない。
「なんだ、今の……?」
「たぶん、神具の力なんだろうけど……。どうしてだが、僕らに効果はないみたいだね」
ソウルミューとダブがそう話していると、バーバリーは倒れているブルースの身体を蹴り飛ばした。
そして、フンッと鼻を鳴らしてその顔を歪める。
「ブルースの奴が
どうやらブルースは神具シストルムの精神攻撃から皆を守るために、自身の
彼の
バーバリーの言葉を聞いたソウルミューは、倒れている父親へ声をかける。
「なんでだよ! そんな……自分の力を……。お前の目的はそいつを止めることじゃなかったのかよッ!?」
叫ぶソウルミューに、バーバリーは嘲笑うかのような笑みを見せた。
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