#381
それから作業を二手に分け、この研究施設にあるという小型ジェット機の改造班に、ミウム、ブルース、リズム、ダブの四人。
細かいガジェットに手を加える班には、ソウルミューとブライダル二人で取り掛かることになった。
「ったく、なんで私がこんなつまんないことに手を貸さなきゃなんないんだよ」
実験室で作業をしながら、ブツブツ文句を言っているブライダルにソウルミューが声をかける。
「なあ、お前って傭兵なんだろ?」
「そうだけど……それがどうかした?」
不機嫌そうに返事をするブライダル。
先ほどの発言からもわかるが、彼女はどうも電子機器をいじる細かい作業などはあまり好きではないようだ。
眉間に
ソウルミューはそんなことなどお構い無く言葉を続ける。
「じゃあ、なんでリズムのことは守ってくれるんだ? あいつがお前に大金を払ったとはとても思えないんだが」
ブライダルは作業していた手を止めて、ソウルミューのほうを振り向いた。
その不機嫌そうな様子は変わらないが、いつもの彼女とは違い、その表情からは真剣味が感じられる。
「私は傭兵だけど殺しが専門ってわけじゃない。だけど、依頼主のほとんどがたとえ護衛や奪還でも殺しを要求してくる」
ブライダルは椅子から立ち上がって、止まってしまっていた音楽をかける。
流れ始めたのは、アース·ウインド·アンド·ファイヤーのセプテンバーだ。
彼女は小躍りしながらステップを踏んでクルリとまたソウルミューのほうを向く。
「あの子だけだったんだよ。誰か――何かを救ってほしいって依頼してきたのはさ。木から降りられなくなった猫ちゃんを助けてあげてってね。それがまさか世界をぶっ壊すほどの神具だったとは思いもしなかったけど」
ブライダルは今までにもリズムと同じくらいの子供に仕事を依頼されたことがあった。
それこそ老若男女に。
だが、先ほど彼女が言うように命を救ってほしいという頼みは、後にも先にもリズムだけなのだと腰を捻らせながら答える。
「そうか……。なんとなくわかった……」
「まあ、例外もあるけどね。あのミウムなんてさぁ~。世界を救うのを手伝ってくれとか言ってきたしさぁ~。マジでぶっ飛んでるでしょ? さすがについていけないなぁ~なんて思ったけど、楽しそうだから付き合ってやってるんだ」
「せ、世界を救うって……あの女……何もんだよ……? なんか雰囲気からしてただもんじゃなさそうだが」
「あんた、モテないっしょ? 本人がいないところで女の秘密を聞きたがるなんて非モテ確定。最低だよ」
「それとこれとは関係ねぇだろ!」
二人が怒鳴り合い始めると、ミウムたちが戻ってくる。
大音量の音楽が流れる中で喚いている二人を見たダブは、こんな人たちに任せて大丈夫なのかが心配になっていた。
「心配するな。ああ見えても二人共頼りになる。特にブライダルは不死身だしな」
「えッ!? なんで今は僕の考えていたことがわかったの!?」
「そんな小さなことは気にしなくていい。早くこっちも終わらせて敵の本拠地へと向かうぞ」
ダブが考えていたことを読まれて驚き訊ねたが、ミウムに急かされ、結局何も聞けなかった。
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