#380
その後、ソウルミューはエレクトロハーモニー社へと連絡。
社長であるハザードクラスの女社長フォクシーレディと話をした。
どういう交渉があったのかは誰にも伝えられなかったが、彼は会社の所有するサルファイドゾーンにあった無人の研究所を借りられることとなった。
「よし、レイ·ザット·ファンキー·ミュージックだ。ワイルド·チェリーをかけろ」
研究所に到着したソウルミューは、誰に断ることもなく音楽をかけた。
所内にあるスピーカーすべてから、ギターの音から始まるファンキーなリズムが流れ始める。
「ホント音楽の趣味だけは合うんだよなぁ……。顔も性格もファッションセンスも全然趣味じゃないけど」
ブライダルは流れる音楽を聞いてそう呟いていた。
それからソウルミューは踊りながら研究所内を進み、ある部屋へと皆を連れていく。
そこは兵器開発のための実験室で、電子機器や工具が一通り揃っていた。
《こいつはスゲーや。共和国のところよりも設備が良いんじゃねえか? こんな辺境にある研究所なのによぉ》
ミウムの機械の腕に付いている黒羊――ルーツーが驚いていた。
さすがはハザードクラス――
その設備は、今や世界を統べているバイオニクス共和国にも負けていない素晴らしい最新のものだった。
ソウルミューは早速電子機器の電源を入れ、工具を用意し何かを始める。
どうやらジグソーポットから持ってきたガジェット類や兵器を改造しているようだ。
「何をするかと思ったらお得意の機械いじりか。悪いが私は先へ行かせてもらう。元々一人でやるつもりだったしな」
そんな彼を見たブルースは、深くため息をつくとその場から去ろうとする。
ブルースはソウルミューがふざけているのだと解釈したようだ。
先ほどの話を聞いて、ソウルミューが自分の開発したガジェットを実戦で試そうとしているだけだと呆れて実験室を後にしようとしたが、リズムによって止められる。
「待ってお父さん。お兄ちゃんだって真剣なんだよ。それに一人よりもみんなで戦ったほうがシストルムを取り返せるでしょ?」
「リズム……。お前はここでお兄さんといなさい。それと先に謝っておくがシストルムは私が預かるからな」
「それはわかったけど……でも、お兄ちゃんを信じてあげて! お父さんがいない間ずっとお兄ちゃんは頑張ってたの! きっとあいつらを倒せるスゴイものを造ってくれるからッ!」
リズムの気迫に押され、ブルースは何も答えることができなくなっていた。
そんな二人を見ていたブライダルが笑いながら言う。
「やっぱりリズムには敵わないね。まあ、しょうがないよ。この子は特別だもの」
ブライダルに続いてミウムも口を開く。
「リズムは正しいことを言っている。あなた一人よりも我々で全員で協力して戦ったほうが確実だ。それに、そう捨てたものでもなさそうだぞ、あなたの息子は」
ミウムがそう言いながら作業を始めたソウルミューを見ると、ブルースも視線を彼へと移す。
そこには真剣な表情で工具を手に電子機器に手を加えてる息子の姿があった。
「僕にも何か手伝えることない?」
そんなソウルミューにダブが声をかける。
それを見たミウムも彼と同じようにソウルミューに近づいていった。
「科学反応を利用した気体レーザーのようなものか……。うん、発想は悪くない。だが、これでは弾数が限られてしまうだろう。誘導放出を利用するなら共振器のほうに手を加えたほうがいいぞ」
「お兄ちゃん、アタシも手伝う」
そして、リズムも兄の元へ走る。
「じゃあ、私は皆を応援してあげる。がんばれ~世界はあんたたちの手にかかってる~」
それからブライダルが張りのない声で激励した。
ブルースはそんな様子見ると、黙ってまま息子に手を貸すのだった。
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