#373

「どうした、五分にはまだ時間はあるぞ。それともご丁寧に頭でも下げに来たのか? 町を攻撃してすみません。ダブと猫はお返ししますから許してくださいってよ」


ブラスターハンドガンを構え、窓から体を乗り出して言うソウルミュー。


だが、バーバリーはその漆黒の化粧がほどこされた顔を歪めて笑う。


そして、広げた掌をソウルミューへと向けるとそこから光を放ってきた。


ソウルミューは慌ててそれをかわすと声を張り上げる。


「危ねぇな! そっちがその気なら今すぐ沈めてやるぜ!」


ソウルミューは再び磁気を帯びた特殊な爆弾を投げつけた。


投げられた球体はまた落下していったが、先ほどと同じく永遠なる破滅エターナル ルーインの大型航空機へと向かっていく。


カチカチと音が鳴る球体を掴み取ったバーバリーは、光を纏った手でそれを握ると爆発もせずに粉々に砕け散った。


「こんなもので私を止められると思ったのか? 科学兵器など所詮オーラの前では玩具おもちゃに過ぎん」


「そんなもんやってみなきゃわかんねぇだろうがッ!」


ソウルミューはいつの間にか背負っていたジェットパックで宙へと飛び出し、バーバリーへ二丁のブラスターハンドガンを発射。


バーバリーは光の障壁でそれを弾きながら、向かってくるソウルミューへと襲い掛かる。


それを見ていたブライダルは、自分の乗るジグソーポットにもジェットパックがあるのかと、操縦席の後ろに積み上げられたガジェットを漁っていた。


「あのクソ兄貴! ジェットパックまで持ってたのかよ!」


ブライダルの言う通りジェットパックはかなり貴重なものだった。


バイオニクス共和国によってストリング帝国の技術が世界中に知られることになったが、未だにジェットパックの大量生産が難しく、現在でも実戦で使っているのは帝国軍くらいだ。


バーバリーのオーラを操る力は強力だが、近接戦闘が得意なブライダルがソウルミューと二人掛かりなら勝機はある。


「いやいやつーかあんな奴は私だけで十分勝てるからッ! 神の視点で余計な説明してんじゃないよ! てゆーかなんなんだよ! どこにもないじゃないかジェットパックッ!」


喚くブライダルだったが、大型航空機からの攻撃を躱すため、いつまでもジェットパックを探している時間もなく結局見つけることができない。


「死ねよピエロッ!」


その間、ソウルミューはジェットパックで空を飛びながらバーバリーへブラスターハンドガンを撃ち続けていた。


だが、当然のことながら彼にはその攻撃は通じない。


何度ビームを撃とうが光の障壁で弾かれ、反対に光を放たれて応戦されていた。


それでもソウルミューはジェットパックを使って、見事に避けながら負けずに反撃する。


「思ったよりも動ける。まるで虫だな。鬱陶うっとうしくて敵わん」


「そいつはどうも。オレはジェットパックの操作なら帝国兵よりも自信がある! いくら変な光を使おうがお前にオレは倒せねぇよ!」


「いくら早かろうと所詮は虫だ。手を広げれば簡単に捕まえられる」


バーバリーがそう言った瞬間――。


ジェットパックで飛んでいたソウルミューの背後へと現れる。


一瞬で後ろを取られたソウルミューは、空中でバーバリーを蹴って反転。


そのまま回転しながらブラスターハンドガンを撃ったが――。


「遅いな。機転は利くが能力は平凡、いやそれ以下だ。優秀とはとても言えん」


気が付くとバーバリーの光る右手が彼の喉元を掴んでいた。

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