#353

崩れた建物の中でフラフラと周りを見渡すミックスは、倒れている永遠なる破滅エターナル ルーインの信者たちを見て表情をくもらせていた。


「ダメだ……。身体がうまく動かない……」


彼はすぐにでも脱出しなければならないといけない状況で、信者たちの心配をしていた。


苦しそうにしている彼らを助けようとしたが、シンとの戦いで体力を使い切ったのだろう。


全員を運ぶのは無理だと、表情を曇らせていたのだ。


ミックスが肩を落としていると、そこへ両腕にびっしりと刺青が入った顔に大きな傷を持つ男がやって来る。


「お~終わらせちまったか。一足遅かったな」


ジャズがヴェルサーを倒したことで、陶器オオゲツの加護が戻ったプロコラットだ。


プロコラットを見たミックスは、パッと笑顔になるとそのまま倒れ込む。


そんな彼をプロコラットは支えた。


「どうして戻って来たの? やっぱ俺じゃ頼りなかったのかな?」


「そんなじゃねぇよ。ほら、肩貸してやるからしっかり立てって」


プロコラットはミックスに肩を貸すと微笑んだ。


それからミックスは、倒れている信者たちを助けたいから手を貸してほしいとプロコラットに言う。


「このままじゃみんな死んじゃうよぉ。なんとかしなきゃ」


「ほっときゃいいんじゃね? 自業自得だろ?」


「でも、やっぱ放っておけないよ……」


「しょうがねぇなぁ……」


プロコラットは呆れながらそう言うと、どこからか出した陶器オオゲツを宙に放る。


すると、周囲の地面が輝き出した。


その光に包まれたミックスは、自分の身体から痛みが引いていくのを感じていた。


プロコラットには陶器オオゲツにより得た特殊能力があった。


それは五穀の恩寵グレイングレースと言い、彼が張った結界内にいる者の生命力を奪えるというものだ。


彼はここに来るまでに周囲に結界を張っており(シンと戦うつもりだった)、五穀の恩寵グレイングレースを応用して自分の生命力を信者たちに送った。


さすがに重傷者の人数が多過ぎたのもあって、かなり疲労しているようだった。


「これで死にゃしねぇだろ? おかげで俺も飲み過ぎた次の日みたいにフラフラだけどな」


「ハハハ、プロコラットにしてはめずらしいね。事前に戦う準備をしていたなんて」


「言ってろよ。さあ、女のとこへ戻ろうぜ」


ミックスもプロコラットも立っているのも辛そうな状態で、互いに笑みを交わすとその場を後にした。


「それいえばジャガーのヤツはどうした? 一緒じゃねぇのかよ?」


「プロコラットとユダーティーには話すけど。ジャズはジャガーの双子の姉で、いろいろあってジャガーのことは彼女の前で話さないでほしいんだ」


「なんでだよ? 姉弟ケンカでもしてんのか?」


「複雑な事情があるんだよ。俺にもよくわかんないけどさぁ」


ゆっくりと歩く二人の背中から物音が鳴った。


「ま、待て……」


二人が振り返ると、そこにはシンが凄まじい形相で立ち上がっていた。

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