#343
ニコを抱きかかえるジャズと、気を失ったプロコラットを担いだユダーティの二人は、その場から走り去っていった。
残されたミックスとシンが、向かい合いながら相手のと距離を縮め、視線を合わす。
だが、その表情は実に対照的だ。
マシーナリーウイルスの適合者である少年は眉間に深く皺を寄せ、目の前にいる男を睨んでいる。
神具から加護を受ける
そして、互いにそれぞれの武器を構える。
適合者の少年は機械化させた腕――
ミックスの
「やはりお前とは殺り合える運命だったようだな。この聖剣ズルフィカールの力を全力で出せると思うと、俺は嬉しくってしょうがない」
「勝手に言ってなよ。俺はただお前をぶん殴りたいだけだ」
「正直に言え。お前も感じているのだろう? この聖剣とお前が持つ力が互いに共鳴し合っているのをな」
何も答えなかったが、ミックスはシンの言っていることをたしかに感じていた。
だが、この感覚は初めてではない。
以前に、クリーンの兄であるブレイク·ベルサウンドとぶつかり合ったときと同じものだ。
それは、まるで相手の考えていることが伝わってくるような――。
目の前にいるシンの身体から溢れる
しかし、今のミックスにはそんなことはどうでもよかった。
この目の前にいる長髪の青年は、自分が楽しむために自分の仲間を殺したのだ。
ミックスにとって命を奪う行為はけして許せず、さらに味方を露程にも思わない奴が大嫌いなのだ。
「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇよ! ともかく俺はお前をぶっ飛ばす!」
「そうだな。さっさと始めようか」
そして壊れた牢屋の前で、金属がぶつかり合う音が鳴り響いた。
――ミックスがシンと戦い始めた頃。
ジャズはユダーティと共に、プロコラットにかけられた魔術を解く方法を考えながら逃げていた。
彼女にはプロコラットがどれだけの実力を持っているかはわからなかったが。
マシーナリーウイルスの適合者であるミックスが、自分が束になっても敵わないと言っていたことを思い出し、プロコラットが
「たぶん、あの布で顔を隠して女が術を解くカギだよね?」
ジャズに訊ねられたユダーティはコクコクと頷く。
気を失っているプロコラットを背負いながらも笑顔で走る彼女を見たジャズは、最初に見た印象とドンドン人が違ってくると思っていた。
ニコもジャズの脇に抱えられながらユダーティのパワフルさに両目を丸くしている。
「とりあえず武器がいるよね。ユダーティ、あなたって戦える人?」
ユダーティは担いでいるプロコラットをブンブン振って頷いた。
ジャズとニコはそんな彼女を見て、ハハハと笑い返す。
「なら、適当に武器を奪ってその女のとこに行っこか! こっからはあたしらの本領発揮だよ!」
そして、ジャズとユダーティはこの基地の出口とは反対にある礼拝堂のほうへと向かった。
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