#344
礼拝堂へと向かっていたジャズたちは、途中で法衣を着た集団――
おそらくミックスとシンが戦っている牢屋のある建物へと向かっているのだろう。
きっとシンが味方を斬り殺し、自分たちが牢から逃げたことをは知ったために動き出したのだ。
その格好には似合わない自動小銃で武装し、慌ただしくしかも整列して走っているその信者たちを見たジャズは、これなら警備も手薄になっているはずだと考えた。
まずは武器だ。
そう思ったジャズはユダーティに声をかけ、その集団から離れたところにいた信者数人を襲い、着ている法衣と自動小銃をを奪う。
「やるねぇ~。さすがは俺と兄弟の女たちだ」
いつの間にか目を覚ましていたプロコラットが手を叩いて笑っている。
彼は先ほど、いきなりユダーティに首を絞められて失神させられたことなどもう忘れているようだった。
ジャズはそんなプロコラットを見て呆れていたが、すぐに頭を切り替えて訊ねる。
二人共銃は扱えるかと。
「いや、使ったことはねぇよ。でもまあ、こんなもん相手に銃口を向けて撃ちゃあいいんだろ?」
奪った自動小銃を持って適当に構えるプロコラット。
ユダーティのほうも彼と同じように銃を持って、どうすれば弾が出るかを確認していた。
そんな二人に銃の扱い方を簡単に教えたジャズは、着ているストリング帝国の軍服の上から法衣を纏い、プロコラットとユダーティにも同じように身に着けるように言う。
そして捕らえた信者へ銃を向け、プロコラットに術をかけたと思われる布で顔を隠している女性――ヴェルサーの居場所を吐かせた。
「いや~慣れてるな~。なんでそんなに手際がいいんだよ?」
プロコラットがジャズに訊ねると、ユダーティも彼と同じ気持ちだったようで、彼女のほうを向いている。
ジャズは答える。
「こう見えても潜入捜査はお手物なんだよ。さて、じゃあそのヴェルサーっていう女のいるところもわかったし、行きましょうか」
「ああ、さっさと行こうぜ」
「あッ、ちょっと待って、ヴェルサーのとこへ行く前に通信機器のあるところに向かいましょう」
「あん? こんなときにSNSでもやんのかよ?
「違うよ……。なんでこんなときにそんなことするんだよ……」
ジャズはプロコラットの言葉に辟易すると、捕らえた信者から通信機器のある場所を聞きだし、そこへ向かってからヴェルサーのいる礼拝堂へと向かうことにした。
(さっきの街から帝国までかなりの距離があるけど。もしかしたらここら辺に誰かの部隊が来ている可能性もある)
ジャズは考えた。
ストリング帝国からこの地域までは難しいが、本国へ連絡することでこの周辺の近くにいる帝国の部隊に助けを呼べるかもしれないと。
そんな都合よく味方の軍隊が来てくれるとは思わないが、もし自分たちが殺されても後々のことを考えれば、ここで連絡を取っておくべきだ。
「へぇ~考えてんな~」
「本当ならここへ入る前にやっておくべきだったけどね」
「いやいや、大したもんだよ。さすがミックスの女だ」
「その言い方止めてくんないッ!」
からかわれていると思い、ジャズが声を張り上げると、プロコラットとユダーティ、さらにニコまで笑うのだった。
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