#318

ラヴヘイトは現れたブレイクを見て舌打ちをする。


そして、ミウムに向かって怒鳴っている彼に声をかける。


「やっぱお前も来てたか。他の連中は何やってんだよ。侵入者が最上階へ来ちまってんのによ」


ブレイクはラヴヘイトの姿を見ると、両手に握った小雪リトル スノー小鉄リトル スティールを構える。


臨戦態勢に入った彼を見たラヴヘイトは、フンッと鼻を鳴らすとブツブツ文句を言いながら近づいていく。


「どいつもこいつもイライラさせやがる。こっちは必死に交渉しようとしてんのによ。……さっさと終わらせて上層部の連中と話をつけてやる」


ブレイクは苛立っているラヴヘイトに向かって言う。


「ずいぶんとご機嫌ナナメじゃねぇか。その顔の傷を見る限り、やられそうになってたんだろ?」


「ああ、そうだよ。だがテメェには俺をやれねぇ。噂の刀を用意してきたようだが、ダイナコンプ内では加護には頼れねぇぞ」


ラヴヘイトの鞭のようにしなる蹴りがブレイクを襲う。


ブレイクは二刀で応戦するが、ラヴヘイトは素手のまま剣を受けてそれを自らのエネルギーへと変えてしまう。


「なんで上層部の連中がお前を最強だともてはやしているかわかるか? それはお前があのクリーン·ベルサウンドの子供ガキだからだよ!」


「刑務所の中でオレに嫉妬でもしてたのかよ? 男のジェラシーはみっともねぇなッ!」


「お前は何も知らねぇんだ! 奇跡人スーパーナチュラルやその道具にどんな力があるのかをなッ!」


激しくぶつかり合う両者。


加護による身体能力の向上がなくとも、鍛え抜かれたブレイクの剣技はラヴヘイトの力に勝るとも劣らない。


だが効果はない。


全く通じない。


ブレイクの凄まじい斬撃は、ラヴヘイトの能力である還元法リダクション メゾット のよって彼の力を増幅させるだけだった。


このままではやられる――。


ブレイクはラヴヘイトの能力を前にして攻めあぐいていた。


(聞け、ベルサウンド……)


そのとき、ブレイクの頭の中で声が聞こえた。


苦しそうな女性の声――今まさに全身が機械化しそうなミウム·グラッドストーンものだ。


(なにP-LINKを使ってんだ!? テメェは機械化を抑えることに集中してろ!)


(いいから聞け……。そいつの能力は――)


ミウムは呻くように言葉を続けた。


ラヴヘイトの能力である還元法リダクション メゾット は、彼本人が受けた攻撃の原理を理解していなければ発動しないと。


(今のお前では奴は倒せない……。だが、リトルたちの力が戻れば……)


(それ以上喋んじゃねぇよ!)


(お前は……ラヴヘイトに勝てる……)


そこまででミウムの声を途絶えた。


ブレイクが彼女のほうへ視線をやると――。


「人の心配してる場合かよ!」


ラヴヘイトの蹴りをまともに喰らい、壁を突き抜けて外へと放り出されてしまう。


だが、なんとか日本刀の刃を突き立て、壁に刺さった状態から再び最上階へと戻る。


再び両者は対峙するが、ブレイクにはもう何も手がなかった。


たとえミウムがいうことが本当だとしても、ダイナコンプでリトルたちの力を発揮できない今のブレイクでは、ラヴヘイトに手も足も出ない。


「次はしっかり突き落としてやるよ!」


だが、それでもラヴヘイトは攻撃の手を緩めない。


再びブレイクを突き落そうと向かって行く。


ブレイクはどうすればいいのかと思考を巡らせていると、当然両手に握っていたリトルたちが輝き始めた。


「なんだと!? お前もその女と同じ力がッ!?」


驚愕するラヴヘイト。


だが、彼以上に驚いていたのはブレイク本人だった。

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