#315

アーティフィシャルタワー内に入り、ブレイクはミウムの後について入ると、彼女はエレベーターを素通りしていった。


驚く彼にミウムはP-LINKでテレパシーを送る。


(お前はそのままエレベーターに乗れ。私は階段で行く)


(バラバラでいいのか? それだといざってときにテメェを守れねぇじゃねぇか?)


ブレイクの返信にルーツーが二ヒヒと笑う。


《優しいねぇ~。守ってやるだってよミウム。どうやらベルサウンドはお前に惚れちまったらしい》


(こんなときにふざけてんじゃねぇよ!)


苛立つブレイクにミウムは問題ないと返事をし、そのままエレベーターに乗って最上階まで行くようと指示を出す。


バイオニクス共和国の警備が全身ホログラムでだませるほど簡単なものではないと推測した彼女は、もしものために敵の誘導をブレイクに頼んだ。


仮想試着バーチャルフィッティングを応用した全身ホログラムを見破られた場合に、ブレイクがタワーで暴れ、その間にミウムが標的を始末するという作戦だ。


(また行き当たりばったりな作戦だな。もう少し考えて行動できねぇのかよ)


(そういうお前は粗暴そぼうなわりに神経質な奴だ。だからこそ頼りになる。では、任せたぞ)


ミウムの声が途切れ、ブレイクは目の前にあったエレベーターへと乗り込む。


エレベーターにはブレイク以外にも暗部組織ビザールのメンバーも乗ってきた。


見覚えのある顔が数人いるが、イーストウッドやラヴヘイト、さらにジャガーやリーディンの姿はない。


今のブレイクは、仮想試着バーチャルフィッティングを応用した全身ホログラムによって、身長も骨格も別人であるスーツを着た大人の姿だ。


それはミウムも同じであり、すでに組織に面が割れている二人でも見つからずに済んでいる。


(中に五人……。全員特殊能力者じゃねぇが……)


ブレイクは見覚えのある顔から、彼らが普通の人間であることを把握する。


暗部組織ビザールのメンバーすべてが、ブレイクのような奇跡人スーパーナチュラル、リーディンのような呪いの儘リメイン カース、ラヴヘイトのような特殊能力者ではない。


その多くがジャガーと同じく普通の人間だ。


だが、だからといって油断大敵である。


暗部に所属しているということは、今まで闇の世界で戦ってきたということだ。


ジャガーがそうであるように、知恵と経験で特殊能力者を倒せるような人間もいるのだ。


エレベーター内でブレイクは、暗部のメンバーの囲まれながらそんなことを考えていた。


その一方で階段で最上階を目指そうとしているミウムは――。


《やるのかミウム?》


全身ホログラムを解き、誰もいない階段でルーツーに訊ねられていた。


彼女はコクっとうなづくと、機械の腕ではないほうの生身の腕を床へとかざす。


すると地面が揺れ始め、アーティフィシャルタワー全体が激しくが震え出した。


そこからミウムはつま先で床をコツンと叩くと、階段のフロアが割れて剥き出しの地面が盛り上がってくる。


「最悪ここで私が死んでも、後はベルサウンドたちがなんとかしてくれるだろう」


ミウムがそう言うと、盛り上がってきた地面が彼女を囲い始め、そのまま物凄い速度で上がっていく。


まるで土で出来たエレベーター、いや遊園地にある上下する垂直落下アトラクションのような勢いで、ミウムを乗せた土の囲いは最上階を目指す。


その中でレーザーガトリングガンを担ぎ直したミウムは、建物内にいる人間すべての動向を把握しようとP-LINKを発動させるのだった。

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