#204

それからミックスたちは目的地へと到着とうちゃく


時間は夕食時を過ぎてすでに夜なのだが、それでも席は他の客でくされていた。


その多くがミックスたちと同じ学生だ。


さすがにクリーンくらいの中学生はいないが、夜のファミリーレストランは高校生や大学生でにぎわっている様子である。


店内に入ると店員のドローンが何名なのかをたずねてくる。


「四名と三匹です。席はペットありのほうでお願いします」


ミックスが答えると、ドローンは機械的な声を出して了解。


彼らを空いている席へと案内する。


ミックスたちがよく来るこのファミリーレストランには、先ほどクリーンが言ったように愛玩あいがん動物どうぶつを連れて入ることが可能かのうである。


それは店内てんない敷居しきいもうけ、ペットありせきとペットなし席で分けているからだ。


アフタークロエ以前から人口じんこうが少なったこの世界では、動物や動物がたロボを家族としている者が多いため、世界中でどの国でもこのようなエリア分けが当たり前にされている。


ミックスたちは当然とうぜんペットありエリアの席へ。


六人がけのテーブル席にすわる。


「二人はなにをたのむ? 特にないならドリクンバーでいいよね?」


ミックスがテーブルからかび上がったバーチャル画面がめん――タッチパネルで注文ちゅうもんするメニューを出すと、ヘルキャットとアリアは両目を大きく広げてそのかび上がった映像をながめ出していた。


「なんだこの最新設備せつびはッ!? こんなものを大衆食堂で使っているのかッ!?」


立体映像ホログラムなんて、重要じゅうよう会議かいぎのときにくらいにしかお目にかかれませんよッ!?」


「はい……ここでは普通なんですよ、二人とも……」


さすがのミックスも、こう立て続けにおどろく彼女たちに辟易へきえきしていた。


それから人数分のドリンクとニコとリトルたちの飲み物を注文し、ようやくどうしてクリーンが一人で待ち合わせ場所にあらわれたのかの話になる。


「実は、私もくわしくは知らないのですが、ふるい知り合いにきゅうに呼び出されてしまったようで、そこで代わりにミックスさんたちに会ってあげてほしいとたのまれたのです」


どうやらクリーンがいうに、ウェディングにはいそぎの用事が入ってしまったらしい。


しかし、突然夜に女子中学生を呼び出すような人間は誰なのだろう。


ウェディングは性格的にいやならハッキリとことわるタイプなのだが。


つまり、彼女が無下むげにできない相手ということになる。


ミックスはウェディングにそんな知り合いがいたのかと、小首をかしげていた。


「あまり詮索せんさくしないほうがいいわよ。舞う宝石ダンシング ダイヤモンドはハザードクラス。あんたに知られたくないことくらいあるでしょ」


「それに、彼女とはお話したことがないのでどのような性格をしているのかはわかりませんが。やはりハザードクラスとはいえ彼女も年頃の女の子、秘密ひみつの一つや二つあるでしょうし」


「二人とも言っていることはバラバラなのに、言いたいことは同じなんだね」


ミックスは、ヘルキャットとアリアにそう言われ、彼女たちらしいなと思った。


「よし、じゃあウェディングは今度紹介するとして、二人とジャズがどうやって仲良くなったのかを聞かせてよ」


「それ、私も是非聞きたいです。帝国の方々がどのような生活をしているのかも知りたいですしね」


ミックスがそういうとクリーンが賛同さんどう


だが、ヘルキャットとアリアはあまり話したそうではない。


ミックスがそんな彼女たちに早く話すようにうながすと――。


「そんな、人に話して面白いようなものじゃない……」


「聞いても退屈たいくつになってしまうと思いますが……」


つまらないから止めておいたほうがよいと返事をする。


だがミックスは席から立ちあがり、彼女らとクリーンのドリンクを取ってくるといって歩いて行ってしまった。


話はドリンクを飲みながらしようと。


「あのバカ……私たちが何を飲みたいか聞いてないじゃないか」


「ミックスくんらしいですけど……」


「それよりもお二方、あなたたちの話が退屈なんてことはありませんよ。ミックスさんが戻ったらどうか話をお聞かせください」


クリーンの言葉を聞いた二人は笑みを浮かべる。


「クリーン·ベルサウンドがそう言うなら……」


「ハザードクラスの妹さんにそこまで言われては、私たちも話さないわけにはいきませんね」


「妹は関係ないと思いますけど……よかった。ではお願いします」


そして、人数分のドリンクを持ったミックスが意気いき揚々ようようと戻ってくるのであった。


「さあ、早く聞かせてよ!」

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