#200

うつむくヘルキャットの背中にポンッと手を置くアリア。


ヘルキャット自身も言い過ぎたと思ったのだろう、そんな彼女の気持ちをさっしてかアリアが気遣う。


「ごめんなさい……。あんたに言ってもしょうがないことなのに……」


ヘルキャットがあやまると、ミックスも自分の配慮はいりょのなさを びた。


気まずい空気が流れる中、そこへ一人の少女が現れる。


「お待たせしちゃってすみません。ウェディングに急に言われたもの……」


和装わそう姿すがた白髪はくはつの少女――クリーンだ。


彼女は申し訳なさそうに頭を下げ、どうして自分がここへ来たのかを説明しようすると――。


「ク、クリーン·ベルサウンドッ!?」


「まさかロウル·リンギングからの刺客しかくですかッ!?」


ヘルキャットとアリアが声を張り上げて身構みがまえる。


二人は背負せおっていた荷物から電磁波放出装置――インストガンを瞬時しゅんじに出し、クリーンへと銃口じゅうこうを向けた。


「わぁぁぁッ!? なにやってるんだよッ!? クリーンは友だちだよ友だちッ! 刺客なんかじゃないってッ!」


クリーンをかばうように二人の前に出たミックスは、大あわてで誤解ごかいいた。


バタバタとしている三人を前に、クリーンはいつものように顔を無気力な顔を向けている。


その後、クリーンが刺客ではないことを理解したヘルキャットとアリアは、突然銃を向けてしまったことをあやまった。


そして、何故かニコも一緒になって彼女たちを頭を下げていると、そこへ白い犬と黒い犬二匹が現れて電気仕掛けの仔羊こひつじに飛び掛かる。


小雪リトル スノー小鉄リトル スティールじゃないッ!?」


「今度こそロウル·リンギングからの刺客しかくですねッ!」


ニコへと飛び掛かるリトルたちを見た二人は、先ほどと同じようにインストガンをかまえる。


「だからちがうってッ! 二匹ともニコを見てじゃれてるだけだよッ!」


そんな二人をミックスがまた止めた。


そして、やはりクリーンは無気力な顔でその様子をながめているのだった。


ミックスは、それから誤解を解くついでに、ヘルキャットとアリアの素性すじょうを話した。


二人はジャズの友人で、今はある任務があってこのバイオニクス共和国へ来ていると。


だが、自分がロウル·リンギングに狙われていることまでは言わなかった。


いえば彼女を巻き込んでしまうと思ったのだろう。


ミックスが話したのはヘルキャットとアリアのことだけだった。


「うぅ、ごめんなさい……。まさかあのブレイク·ベルサウンドの妹がミックスの知り合いだとは思わなくて……」


「勘違いとはいえ、本当に面目めんぼくないです……」


どうやらヘルキャットとアリアは、クリーンのことを知っているようだ。


それも当然か。


二人は以前に、共和国へテロ行為こういを仕掛けようとしていたのだ。


共和国に住むハザードクラス――敵になるかもしれない強力な相手のことは知っていて当たり前だろう。


「こちらこそなにか色々と誤解させてしまってすみません。ほら、リトルたちも二人に謝ってください」


クリーンに言われ、小雪リトル スノー小鉄リトル スティール丁寧ていねいに頭を下げる。


ニコはそんな二匹に向かって、気にしないでと鳴いているようだった。


「それにしても、兄はまだしも私のことまで知ってらっしゃるとは、さすがはジャズさんのお友だちですね」


むしろストリング帝国の軍人である二人に知られていたことにクリーンのほうがおどろいていたが、彼女の表情のせいか、それが伝わることはなかった。


「それよりもクリーン。ウェディングはどうしたの?」


「そのことは後でお話ししますよ。とりあえずお店に入りましょうか」


説明は後ですると言い、クリーンは皆に店内へ入ろうとうながすのだった。

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