#187

「ギャーッ! なんでボクの位置がわかるんだよッ!? もしかしてこっちの姿すたがが見えているっていうのッ!?」


「いや、見えてねぇよ」


「じゃあどうしてッ!?」


「さっきいったろ? 同じ説明すんのはメンドーなんだよッ!」


何もないところへ剣を振り続けるブレイク。


だが、彼が剣を振るたびにガキンッという金属音きんぞくおんっている。


その音を聞けば、ブレイクが相手の正確せいかく位置いち把握はあくしていることがわかる。


小柄こがらな少年はこれでは姿を消す意味がないと、マルチラックシステムに組みんでいたカメレオントロンを解除かいじょし、そして距離きょりを取った。


「なんだよ? あれだけ大声出していたわりには大したケガはしてねぇじゃねぇか。カスったくらいで大袈裟おおげさに鳴いてんじゃねぇよ」


「そんなかすりきず一つつけたくらいでよろこんでる君に言われたくないっしょ」


そういった小柄な少年は、背中にあるマルチラックシステムのスイッチを入れた。


どうやら先ほどの姿を消す装置――カメレオントロンとは別のものを起動きどうさせたようだ。


彼の背負せおっているバックパックがうなり始める。


「そのダセェーもんからまたなにか出てくんのか? マルチラックシステムだがなんだか知らねぇが、そんなもんでなにをしようが、テメェじゃオレはれねぇよ」


「たしかに君は強いね。さすが共和国最強といわれるハザードクラス。あの黒犬、小鉄リトル スティールだっけ? 加護かごみなもとであるかたなもなしで、そのうえダイナコンプで身体能力は落ちているはずなのにその身のこなし。正直ボクじゃ君を殺すのはむずかしそうだ」


「テメェを殺すのは難しくなさそうだけどな」


「言うねぇ~。でもまあ、それもやり方を変えればいくらで殺れるっしょッ!」


少年がそうさけぶと、突然ブレイクのかた弾丸だんがんのようなものがつらぬいた。


ブレイクは肩から流れる血を気にせずに、何もないところから飛んでくるたまを切りはらう。


そして、弾を払ってみて思う。


おかしい。


手応てごたえがない。


はなたれた弾丸を切ったときのような感覚かんかくがまるっきりない。


まるで水でも切ったかのような、そんな感触かんしょくだ。


その違和感いわかんに表情をくもらせたブレイクを見て、少年が口を開く。


「気が付いた? そう、それは弾丸じゃないし、レーザーとか光線こうせんでもないよ」


「こいつはテメェのちからか?」


てるようにたずねたブレイクは、顔を少年に向けながら考える。


この少年はまさか自分と同じ奇跡人スーパーナチュラル、または呪いの儘リメイン カースか?


だがこの監獄プレスリー内では、ダイナコンプにより特殊とくしゅ周波数しゅうはすう乱射らんしゃされているため、能力の使用は妨害ぼうがいされているはず。


それなのに、どうして能力が使えているのか。


考えているブレイクへ少年が得意気とくいげになって返す。


「へへーん。どう? おどろいたっしょ? 刑務所内では能力は使えないはずなのに、こんな不思議ふしぎなことができちゃってるんだからさ」


「テメェも加護持ちか? それとも啓示けいじでも受けたかよ?」


「残念、ハズレ~。ボクは奇跡人スーパーナチュラル、または呪いの儘リメイン カースでもないよ~。ちなみに適合者てきごうしゃでもない」


「そうかよ、大体わかってきた。テメェは共和国の実験体モルモットだろ? いや、正確には実験体モルモットだったといったほうがいいな。さっきの攻撃は実験でた能力かなんかだな」


「ピンポ~ン。正解せいかいです~。こんなすぐにわかっちゃうなんてさすが頭いいよね。そりゃ最強のうえに学力もトップだわ~。君は顔もスタイルいいし、ホントにスペック高いわ~。マジリアじゅうッ!」


小柄な少年は両手をたたいてはしゃいでる。


だが、それはブレイクのことを称賛しょうさんしているというよりは、彼を小馬鹿こばかにしているような態度たいどだった。


「でもさ~そんな最強で頭のいいリア充でも、この状況じょうきょうじゃなにもできなよね~」


そして、ニタニタをうれしそうに笑いながら、合わせていた両手を大きく左右さゆうへと広げた。

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