#145

プロコラットの持つ陶器とうきオオゲツの効力こうりょくが切れてしまったミックスとジャガー。


ただ立っているだけでいきれ、まるで熱中症ねっちゅうしょうにでもかかったかのようになってしまった。


次第に、眩暈めまい痙攣けいれん、頭痛などひどくなり。


特にプロコラットと先ほどまでなぐり合っていたミックスの症状しょうじょうは、もはや一等客室の者たちの衰弱すいじゃくよりも進行しんこうしている。


「なあミックス、ジャガー。このへんでやめとこうや。おれは兄弟ゲンカはありだと思うが、さかずきかわわしたお前らをころしたくねぇ」


プロコラットが両手をあげて敵意てきいがないことをアピールしながら言うと、ユダーティも心配そうな表情でコクコクとうなづいている。


二人は本当にミックスたちと戦いたくないのだ。


だったら今すぐオオゲツの加護かご――五穀の恩寵グレイングレース生命力せいめいりょくうばちからき、列車強盗ごうとうなどやめればいいと思われるが。


そもそも言われて止まるくらいなら、最初からミックスたちと戦ってなどいなかっただろう。


たのむぜ、兄弟たち……。俺もユダーティも、お前らが好きなんだよッ!」


両手をあげながらさけぶプロコラット。


ユダーティはそんな彼の後ろで、神にいのるかのように手を合わせ、今にも泣きそうな顔をしていた。


過去かこ出来事できごとのどつぶされ、言葉をしゃべることのできない彼女だが。


その表情からは、“これ以上戦いたくない”と言っているようだった。


プロコラットとユダーティの二人がミックスとジャガーを見る中ーー。


フラフラでたよりない足取りのミックスが前に出る。


「俺も二人が大好きだよ……。正直もう戦いたくない……。でも……それでもこのままじゃ関係ない人たちが死んじゃうんだッ!」


すでに立っているのもつらそうなミックスだったが、その目は死んでいなかった。


身体を引きずるようにして、絶対にプロコラットたちを止めるとさけんだ。


そんなミックスを見たジャガーはためいきをついてから笑みをかべ、プロコラットとユダーティはかなしそうな顔をしていた。


「そうかよ兄弟……。なら、やるしかねぇなぁぁぁッ!!」


プロコラットがミックスに飛び掛かった。


ミックスはけることができず、両腕を上げることもできずに、ただ向かってきたプロコラットを見据みすえているだけだった。


横からジャガーが援護えんごする。


拳銃けんじゅうタイプのインストガンーーオフヴォーカーの電磁波でんじはをプロコラットに向けて発射はっしゃする。


だが、プロコラットははなたれた電磁波を素手すではじき返した。


「こんなもんで止められるかよッ!」


ジャガーはオフヴォーカーでは止められなかったというの口角こうかくを上げていた。


それは、先ほどまでダラリとれていたミックスの腕がプロコラットに向けられていたからだ。


「ああ、それでいいんだよ。オレはあんたを止めるつもりで撃ったんじゃねぇからな。いけッミックスッ!!」


ジャガーの声を聞いたミックスは、その手をプロコラットへとかざす。


すると、プロコラットの動きが止まった。


いや、止まったというよりもこの科学列車プラムラインのゆかに両足がめりんでいる。


「こいつはさっきのッ!?」


「うおぉぉぉぉッ!! シャドーッ!!!」


そして、ミックスの咆哮ほうこうと共に、プロコラットの体は床に押さえつけられた

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