#138

っていくフォクシーレディたちをながめているミックス。


すでに彼に興味きょうみうしなっていそうなトライアングルやサードヴァ―とはちがい、シヴィルだけはずっとその小さな手を振り続けていた。


だがミックスは、笑顔で手を振る幼女ようじょを見ているだけだ。


彼はジャガーと違い、フォクシーレディに協力きょうりょくしてもらえると本気で思っていたのだろう。


今この科学列車プラムラインでは大勢おおぜいの人が危険きけんな目にっている。


その事実じじつを知れば、どんな人間だって手を貸してくれる。


それがミックスの考えだった。


だが、現実げんじつにはフォクシーレディにことわられ、挙句あげく小馬鹿こばかにもされてしまった。


ミックスは、半壊はんかいした貨物車のかべからフォクシーレディたちが見えなくなると、自分は間違まちがっているのかとかたを落とす。


「落ちんでるヒマはねぇぞ」


そんな彼にジャガーが声をかけた。


ジャガーはいそがないと一等客室の乗客じょうきゃくたちが衰弱死すいじゃくししてしまうと言うと、貨物車のとびらを開ける。


「早いとこ行こうぜ。なぁに、オレたち二人ならなんとかなるだろ」


「うん、そうだね」


そして、二人は貨物車を出てプロコラットとユダーティがいる運転席へと向かう。


早足はやあしで進みながら、ジャガーがプロコラットたちをどう止めるかを話し始めた。


こちらは二人で向こうの二人。


普通ふつうに考えれば二対二の戦闘せんとうとなる。


そして、そのうちのどちらかが加護かごを受けた者――奇跡人スーパーナチュラル


「あのみょう陶器とうきを持っていたのはプロコラットだ。そうなると、十中じゅっちゅう八九はっくあの人が奇跡人スーパーナチュラルだろうな」


「なんか身体能力がすごいんだっけ? なら、おれがプロコラットを止めるよ」


「ユダーティも奇跡人スーパーナチュラル可能性かのうせいはある。とりあえず簡単かんたんにいうと、お前が前衛ぜんえいでオレがサポートにまわかたちで行くぞ」


ジャガーは加護を受けた奇跡人スーパーナチュラルの相手をまともにできるのは、マシーナリーウイルスの適合者てきごうしゃだけだと言い、ミックスが前に出るのは当然で何の能力も持たない自分が後方こうほうから援護えんごするという作戦を立てた。


もちろんミックスはそれを聞き入れたが、何故か不思議ふしぎそうな顔をしていた。


それを見たジャガーは、何故そんな顔をしているのかをたずねる。


「だってさ。俺が適合者だって、ジャガーに話したことあったっけ? べつかくしてはいなかったけど、学校ではアミノ先生くらいにしか言ってなかったはずなんだけどなぁ」


「そ、それはだなぁ……」


ギクッと冷やあせくジャガー。


だがミックスは、そのまま言葉を続ける。


「それにさ。なんでジャガーがオフヴォーカーなんて持ってるの? それって監視員バックミンスターの人が使ってるやつでしょ?」


オフヴォーカーとは、外観がいかん肉食獣にくしょくじゅうを思わせる銃口じゅうこうに見える電磁波でんじは放出ほうしゅつ装置そうち――拳銃けんじゅうタイプのインストガンである。


おもに、バイオニクス共和国きょうわこく治安ちあん維持いじする組織そしき――監視員バックミンスターの隊員たちが持つ武器ぶきの一つだ。


そのような物を何故ジャガーのような高校生が持っているのか。


そのことをミックスに訊ねられたジャガーは、さらに冷や汗が止まらなくなっていた。


しかし、それでもミックスはき続ける。


「あとさ。さっき一等客室で誰と電話してたの? なんか聞いてる感じだとずいぶんしたしそうだったけど?」

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