#133

――ジャガーは二等客室のある客車に着くと、すべての部屋にいた乗客じょうきゃくたちを室内にあるベットに寝かした。


当然かぎはすべての部屋にはかかっていたが、彼は持っていた拳銃けんじゅうタイプの電磁波でんじは放出ほうしゅつ装置そうち――オフヴォーカーで、とびらにあったドアノブを破壊はかい


なんなく侵入しんにゅうできていた。


勘弁かんべんしてくれよ。なんといっても今は非常ひじょう事態じたいなんだからな」


ジャガーはうなされている乗客たちの顔を見ながらつぶやいた。


その顔は、先ほどミックスが見たアミノたちと同じように青白く、生命力せいめいりょくうしなった人間そのものだ。


ジャガーの想像そうぞうでは、この現象げんしょうを起こしているのはプロコラット。


だが一体に何をどうやれば、この列車すべてに乗っている人間の生気せいきうばえるのだろう。


考えてもわからないジャガーは、ミックスと同じ学校指定していの作業用ジャケットのポケットからエレクトロフォンを取り出す。


「あの人なら知ってるかもな。一応いちおういとくか」


そして、ある人物に電話をかけた。


「どうした? 何あったのか?」


その人物はほんの数秒すうびょうで電話に出た。


ジャガーは相変わらず出るのが早いなと思いながら、たずねてきた彼に質問しつもんをする。


「メディスンさんすか? ちょっと訊きたいことがあるんですけど」


「なんだ? というかお前、たしか修学旅行中だったよな?」


今ジャガーが電話をしている相手は、彼が所属しょぞくするバイオニクス共和国の暗部あんぶ組織そしきビザールの上司じょうし――メディスンだ。


見聞けんぶんが広く、共和国以外の世情せじょうにもつうじている彼ならば、この列車内で起きた現象について何か知っているかもしない。


そう思ったこそジャガーは、メディスンに連絡をしたのだった。


「今オレらが乗ってる科学列車プラムラインが強盗ごうとうおそわれてるんですけど」


「ちょっと待て、強盗だと? 警備けいびシステムは作動していないのか?」


「さっき貨物車にいるフォクシーレディをねらってきた永遠なる破滅エターナル ルーインくずれの武装ぶそう集団にこわされちゃったのかな? まあ、そんな感じで役に立ってないっすね」


永遠なる破滅エターナル ルーインくずれとフォクシーレディ!? なんでそんな連中とかかわってるんだッ!?」


「いやーオレに言われても……」


それからジャガーは、列車内で起きたことをメディスンに伝えた。


自分ともう一人以外の乗客たちは、おそらく全員原因げんいんのわからない衰弱すいじゃくによって動けなくなってしまっている。


その現象を引き起こしているのは、これまたおそらくその列車強盗。


そのことから、何かみょうな能力でも使われているのか。


それともまったく聞いたことがない未知みちなるちから影響えいきょうなのか。


何か知っていること、気が付いたことがあれば教えてほしいと、ジャガーは電話越しで頭をきながら訊いた。


「それだけの情報じょうほうでわかるわけないだろう」


「使えない上司だなぁ……」


「今なにか言ったか?」


「いえ、な~にも」


それからは、メディスンのほうからジャガーにいろいろと質問を始めた。


その強盗というのはどんなやつだ。


ジャガーたちにその衰弱症状しょうじょうがないのなら、何か二人だけがした特別とくべつなことはないのか。


それとその強盗は何か日本刀にほんとうやら分厚ぶあつい本のような、持ち歩いていて不自然ふしぜんなものを持ち歩いていなかったかと。


質問をされたジャガーは口角こうかくを上げる。


「持ち歩いていて不自然なもの……。やっぱオレの読みは当たっていたみたいだな」

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