#125

「ハザードクラスって、この女の人が?」


「ああ、間違いねぇ。ハザードクラスのフォクシーレディだ」


ハザードクラスとは、共和国からもっと優秀ゆうしゅうな人間と認定にんていされている最高クラスの能力を持つ者のことだ。


現在ミックスが知っているだけでも、クリーンの兄であるくろがねブレイク·ベルサウンド、他校の後輩である舞う宝石ダンシング ダイヤモンドウェディングなどの特別なちからを持った人物ばかりである。


ミックスとジャガーの目の前にいるのは、その一人にかぞえられるフォクシーレディ。


しかも、彼女は世界中の兵器へいきから家電製品まであつかっている会社ーーエレクトロハーモニー社の女社長でもある。


そんなフォクシーレディは職業柄しょくぎょうがらからか、死の商人デス マーチャントと呼ばれていた。


ミックスはふたたびフォクシーレディのほうを見る。


ソファーに寄りかかるその姿すがた妖艶ようえんで、豪華ごうかなファーが付いたコートの上からでもわかるほどゆたかなむねが目立つ。


年齢は二十代前半くらいだろう。


社長というにはずいぶんと色っぽい妙齢みょうれいの女性だ。


「お兄さんお兄さん。いつまでおじょうのこと見てるの?」


「イヤらしいね。トライアングルの言う通りだ」


「そうだそうだ! もっといっちゃえサードヴァー!」


フォクシーレディを見ていたミックスに、彼女のそばにいた三人の少女が声をかけてきた。


全員フォクシーレディと同じ豪華なファー付きのコートを着ているが、見た目がおさないのもあってあまり似合っているように見えない。


「違うよ! そりゃ……キレイだとは思ったけど」


ミックスはあわてて誤解ごかいをとこうすると、不機嫌ふきげんそうにしていたフォクシーレディがうれしそうに笑った。


そして、ソファーから立ち上がり、ミックスへと近づいて行く。


フォクシーレディからは強烈きょうれつ香水こうすいにおいがし、彼女の妖艶さもあってミックスはクラクラしてしまっていた。


「おやおや素直すなおな子だねぇ。三人とも、この坊やたちに自己紹介してやんな」


フォクシーレディがそう言うと、三人の少女はおー! と両手をあげた。


そしてバタバタと動き出すと、綺麗に横一列に並ぶ。


「あたしは長女ちょうじょのトライアングルです。よろしくお兄さんたち」


「あたしはサードヴァー。次女じじょ


「うんとね、あたしはシヴィル! シヴィルだよ! イヤらしいお兄さん!」


最初に自己紹介したトライアングルは、長女っぽくしっかりしている印象いんしょう


次に答えたサードヴァーは、次女っぽく長女に合わせているように見える。


そして、シヴィル は自由じゆう奔放ほんぽうな感じだ。


おそらく、最後に口を開いたシヴィルという子が三女さんじょなのだろう。


どうやらこの三人の少女は姉妹しまいのようだ。


いや、少女というよりは幼女ようじょ


ミックスは彼女たちの年齢ねんれいまではわからなかったが、その小さな体と子供っぽい仕草しぐさからそう思っていた。


「そんなことしてる場合じゃないよッ! 早く逃げないとッ!!」


我に返ったミックスがさけんだ。


だが、フォクシーレディたちはキョトンとした顔で彼のことを見ている。


一体何をそんなに慌てているのだとでも言いたそうな顔だ。


「いきなり入ってきてその態度はないんじゃないのかい? わざわざこの子らに自己紹介をさせたんだ。ほら、あんたらもさっさと名乗りなよ」


「だからそんなことしている場合じゃ――ッ!」


ミックスがわめくと同時に貨物車のかべ破壊はかいされた。

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