#45

ミックスは開いた口がふさがらず、ただ驚愕きょうがくしていた。


先ほどまで電気でんき仕掛じかけの仔羊こひつじニコをいていた犬のスノーが、突如とつじょ日本刀にほんとうへと姿すがたを変え、クリーンの手におさまっているからだ。


普通ふつうでは考えられない現象げんしょう間近まぢかで見てしまった彼は、ただクリーン――彼女から目がはなせないでいる。


するとかたなへと変化へんかしたスノーをかまえ、クリーンの表情ひょうじょうつめたいものへと変わる。


「では、あらためて自己じこ紹介しょうかいをさせていただきます。私の名はクリーン·ベルサウンド、そしてこの子の名は小雪リトル スノー。ミックスさんとは今日が初対面しょたいめんでお食事までごちそうになっていますが、こちらには諸事情しょじじょうがあり、まこともうわけありませんが、問答もんどう無用むようらせていただきます」


「ちょ、ちょっと待ってよッ! ななな、なんでぇッ!?」


「では……まいります」


クリーンはその言葉と同時どうじに飛びかかってきた。


小雪リトル スノーと呼んだやいばしろかたなが、ミックスを体を斬りこうとり落とされた。


ミックスは彼女の一撃をなんとかけたが、そこからけして止まぬ剣撃けんげきはじまった。


めんどう小手こてき、とまるでお手本てほんのような剣撃が、ミックスへとおそいかかる。


ここまですさまじい剣撃をさすがに避けることができず、ミックスは白い刃を手で受け止め続けてクリーンのすきを突き、彼女を身体ごと押し返してみせる。


「なんで!? なんでだよクリーンッ!? ひょっとしておれがなにか失礼しつれいなことしちゃったとか? それだったらあやまるからやめてッ!」


「この金属きんぞくへ打ったような感触かんしょく……。やはりあなたは適合者てきごうしゃのようですね」


クリーンは、ミックスが何を言っても聞くみみを持たなかった。


むしろ、先ほど日本刀を受け止めた彼のうで機械化きかいか――装甲アーマードを見て、何かを確信かくしんしたようだ。


「マシーナリーウイルスの適合者に刃はとおらない……。ならば、これならどうです」


クリーンは小雪リトル スノーの持ち変える――いや、今までの構え自体じたいを変化させた。


それまでの剣道のお手本のような構えから一転いってんし、見たこともない独特どくとく姿勢しせいになる。


「ベルサウンドりゅう、モード小雪リトル スノーみだ雪花ゆきばな


そしてクリーンが刀を振ると、その斬撃がミックスを目掛めがけて飛んできた。


まるで白い雪のような花びらが、するどい斬撃となって襲う。


ミックスはこれを装甲アーマードした両腕りょううではじき、なんとかしのいでみせる。


ふせぎ切ったが彼はまだおどろきをかくせないでいた。


日本刀から飛び道具どうぐが出せるなど、ミックスのいた世界ではありえないからだ。


そんな彼を見ながらクリーンは、すでにつぎの手にうつっていた。


「雪花でもつらぬけない……。これは期待きたいできそうです」


「期待とかよくわかんないけど! いいからこっちの話を聞いてくれッ!」


「私は先に言いましたよ。申し訳ないですが、問答無用です、と」


「いやそれじゃあんまりだよ! 説明せつめいを! せめて説明をしてくださいッ!」


わめくミックスなど無視むしし、一瞬いっしゅん間合まあいをめたクリーンは、そのふとこへと入った。


(マズいッ! ガードが間に合わないッ!?)


「ベルサウンド流、モード小雪リトル スノー斬雪ざんゆき舞踊ぶようッ!」


避けきれず防御ぼうぎょも間に合わなかったミックスは、クリーンのわざをまともに受けるしかなかった。

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