#46

近距離きんきょりからり出される斬撃ざんげきあらし


いや、たとえるなら猛烈もうれつ吹雪ふぶきが一人の人間に向けられているような、そんなすさまじいわざだった。


だが、それでもミックスはたおれなかった。


なんとかその場にり、ふたたび彼女を押し返す。


「どうやらうで以外いがい部分ぶぶん機械化きかいかできるようですね」


ミックスは、クリーンにふところに飛びまれた瞬間しゅんかん、ギリギリのところで腹部ふくぶの機械化――装甲アーマード防御ぼうぎょした。


しかし、やはりクリーンの技のダメージは大きく、装甲アーマードした部分ぶぶんけ、小さな火花ひばなっている。


クリーンは勝機しょうきありと見たのか、先ほどと同じようにミックスの懐へと飛び込む。


すると、ガキンッという金属きんぞく同士どうしがぶつかった音がひびいた。


ミックスは今度はガッチリと両腕でガードしたのだ。


ふせがれたクリーンは一度下がり、彼の様子ようすをうかがう。


反撃はんげきしないのですか? それともできないのですか?」


「できないよ。理由りゆうもないのに女の子をなぐれない」


やさしいお方……。しかし、このままではあなたは私にころされてしまいますよ?」


「そのうち監視員バックミンスターさわぎを聞きつけてやってくる。それまでキミの攻撃を防げばいいだけさ」


ミックスはこのまま時間をかせぎ続け、バイオニクス共和国きょうわこく治安ちあん維持いじする組織そしき――監視員バックミンスター(警察のようなもの)が来るのを待っているという。


監視員バックミンスターがやってくれば自体じたい収集しゅうしゅうにかかり、クリーンも戦ってはいられないはずだと。


「それは……マズいですね……」


ミックスの作戦さくせんを聞いたクリーンは、彼が断固だんことして反撃してこない覚悟かくごを感じると、あることを考えた。


彼女は突如とつじょかたなおさめ、ミックスにを向ける。


「あなたが反撃してこないのなら、これからジャズさんとウェディングを斬り殺します」


「なッ!? なんでそんなことするんだよッ!? 理由わけを話してくれッ!」


こたえる義理ぎりはございません。それでは私は彼女たちを追いかけますので……」


クリーンがその場を去ろうとしたそのとき――。


彼女は突然とつぜんき飛ばされた。


それはミックスが自身じしん両足りょうあしを機械化させ、動きの速度そくど格段かくだん上昇じょうしょうさせ、クリーンへと襲いかかったからだった。


「今の一撃は……?」


なんとか白い刀――小雪リトル スノーで受けていたクリーンだったが、ミックスのこぶし威力いりょくに、思わず唖然あぜんとしてしまっている。


「二人に手は出させないぞッ!」


「くッ!? ベルサウンド流、モード小雪リトル スノー冠雪かんせつッ!」


かまえてさけぶクリーンの刀からは、白い障壁しょうへきのようなものがあらわれた。


だが、ミックスはそんな障壁などお構いなしに、ちからづよにぎった拳を打ち付ける。


受けたクリーンの身体が地面じめんへとめりみ、そのままコンクリートが割れ始めた。


まるで重力じゅうりょく一点いってん集中しゅうちゅうしてかけているような、そんな一撃だ。


このまま押しつぶされそうになったクリーンは、いきなり自分の負けを宣言せんげんする。


まいりました。これ以上いじょうため必要ひつようはなさそうです……。あなたは強い」


「へッ?」


クリーンは、拳を下ろしたミックスを見て、小雪リトル スノーを犬の姿すがたへと変化へんかさせた。


それから彼女は、彼の手を取っていきなり走り出す。


ミックスは、さっきまで戦っていた相手に手を取られ、もう何が何だかわからずに完全かんぜんに頭の中がこんがらがっていた。


ただクリーンに引っ張られ、無理矢理むりやりについていかれているだけだ。


いそぎましょう。早くしないと監視員バックミンスターが来てしまいます」


「だからちゃんと説明せつめいしてよッ! 試す必要がない? あなたは強い? もう意味いみがわからぁぁぁんッ!」


その後、ファミリーレストラン前には、騒ぎを聞きつけた監視員バックミンスターが現れる。


だが、すでにミックスとクリーンはべつの場所へと移動いどうした後だったため、監視員バックミンスター周囲しゅうい簡単かんたん巡回じゅんかいし始めていた。


それから彼らは業者ぎょうしゃへと連絡れんらくし、割れたコンクリートの地面の修理しゅうりたのむと、そのまま帰って行ってしまった。

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