#27

ブロードの言葉の後――。


ヘルキャットとアリアが左右さゆうから電磁波でんじは発射はっしゃ


さらに正面しょうめんからもインストガンがたれた。


ジャズはまよわず前に向かって突進とっしんし、りょうサイドからくる攻撃こうげきをかわしながらブロードがはなった電磁波をインストガンでち落とす。


「思いっきりがいいのはお前のいところだ」


「それだけが取りだからねッ!」


ブロードがうれしそうにいうと、ジャズはインストガンを連射れんしゃしながら彼へとちかづく。


それは、接近戦せっきんせんに持ちめば、両サイドからのくるヘルキャットとアリアの攻撃が、ブロードに当たる可能性かのうせいがあるため止むと思ったからだ。


だが、叔父おじが自分が近づいてくることを考えていないわけがない。


ましてやブロードは効果装置エフェクトを使用し、適合者てきごうしゃと同じくらい身体しんたい能力のうりょく向上こうじょうさせているのだ。


正面からまともに戦って勝てるはずもない。


しかし、その圧倒的あっとうてき不利ふりの中でこそまれるものがある。


相手は勝って当然とうぜんと思っているのだ。


その自信じしん過信かしんへと変わり、そこにすきしょうじる。


そこで生まれた一瞬いっしゅんの隙をけば――と、ジャズはブロードへと飛びかかった。


ヘルキャットとアリアはジャズの予想よそうどおり、ブロードに電磁波が当たることをおそれて手を止めていた。


ブロードはインストガンをて、機械化きかいかしたうででジャズの撃つ電磁波をはじく。


「もらったッ!」


ジャズの銃剣じゅうけんがブロードの手首てくびねらって突き出された。


腕輪ハングル――効果装置エフェクト破壊はかいし、機械化をいた瞬間しゅんかんにブロードをめ落とすというのが、彼女の考えていた作戦さくせんだ。


取っ組み合いには自信がある。


たとえ腕力わんりょくおとっていても、つかんでからの技術ぎじゅつだけなら確実かくじつに自分のほうが上だ。


ブロードを無力化むりょくかさせた後は、ヘルキャットとアリアを説得せっとくし、この場を引いてもらえばいい。


説得がむずかしいくとも、戦っているあいだ監視かんしカメラの電波妨害ジャミングに気が付いた人間がここにやってくるだろう。


それでテロ行為こうい阻止そしできる。


ジャズがまずは腕輪ハングルだと銃剣に力をめた。


だが、彼女の背中せなかに電磁波が放たれ、そのままたおされてしまう。


「まさか、味方みかたに当たることを気にしないなんて……」


ヘルキャットとアリアは、ジャズに向かってインストガンを撃った。


それは前もってブロードから言われていたからだった。


倒れたジャズを見下みおろしながら、ブロードが口を開く。


予想よそうはずれて残念だったな。二人には、いざというときは俺ごと撃つように指示しじを出していたんだ」


「くッ!? そこまでして……」


「あまり無理むりをするな。いくらインストガンの電磁波を軽減けいげんさせるふくを着ていようが、お前はもう身体からだ限界げんかいだ」


ブロードの言うとおり――。


これまで立て続けに戦ってきたジャズはもう限界だった。


だが、それでもまだ彼女は立ち上がろうと地面じめんでもがいている。


あきらめるわけにはいかないのよ……。ヘルキャットとアリア……は、あたしの友だちなんだ……。叔父おじさんもうしないたくない……。なによりもまた戦争なんてさせるわけにはいかないのッ!」


「ジャズ……あんたは……」


「ジャズちゃん……」


そんなジャズの姿すがたを見たヘルキャットとアリアは、思わずうつむいてしまう。


ブロードがそんな二人のほうを見ると、彼女たちは表情ひょうじょうを切りえた。


背筋せすじばし、軍人ぐんじんの顔をへともどる。


少々しょうしょうおくれたが、これから作戦を開始かいしするぞ」


「ハッ、ブロード大佐たいさ


了解りょうかいです、大佐」


そして、ヘルキャットとアリアはブロードの言葉を聞き、背筋を伸ばしたまま敬礼けいれいをするのだった。

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