#22

ジャズはちかづいてくるブロードへインストガンを乱射らんしゃ


電磁波でんじはがブロード目掛めがけて飛んでいくが、効果装置エフェクトによって機械化きかいかしたうでによりはじかれてしまう。


「うおぉぉぉッ!」


飛び道具どうぐではブロードを止められないと思ったジャズは、彼女が持つ銃剣じゅうけんタイプのインストガンの先に付いたナイフで接近戦せっきんせん仕掛しかけた。


およそ彼女の体格たいかくからは想像そうぞうのできない力強ちからづよきをり出しながら、ブロードをねじせようとする。


相変あいかわらずいい動きだ。やはり今後の共和国きょうわこくとの戦争で、お前はかすことができない逸材いつざいだな」


するどい突きを休みなく続けるジャズ。


先ほどのミックスとくらべるとわかるが、彼女の動きはそこらの人間よりもはるかに洗練せんれんされている。


その一撃一撃がジャズのごしてきた日々ひびあらわしている。


しっかりと訓練くんれんしていてもこうは動けない。


武術ぶじゅつ格闘技かくとうぎ経験けいけんがある者が見れば、彼女の動作どうさにいかに無駄むだがないかわかるだろう。


だがしかし、それでもブロードには当たらない。


けして彼にはとどかない。


二人が効果装置エフェクトなしの状態じょうたいで戦えば良い勝負しょうぶになりそうだが、それでもブロードにはジャズの動きのながれがわかっているようだった。


(ダメだ。ブロード叔父おじさんにはあたしの動きが完全に読まれてる。これじゃあの腕輪ハングルちからを使われなくても止められないじゃないのッ!)


実際じっさいにブロードはすでに効果装置エフェクトのスイッチをオフにしてた。


いや、彼は最初さいしょからジャズと戦うつもりなどなかったのだ。


「このぉぉぉッ!」


「悪いが。どれだけ素晴すばららしい動きでも、型通かたどおりでは俺には届かん」


ジャズの銃剣を避けたブロードは、そのまま彼女の後ろへとまわみ、背中せなかから押さえんだ。


体重差たいじゅうさがあるため、ジャズは力任ちからまかせに地面じめんへとたたきつけられてしまう。


「このまましばらくのあいだねむってもらうぞ」


ジャズは土をみながらなみだながしていた。


それは、叩きつけられたいたみによるものではない。


彼女は、自分の不甲斐ふがいなさや何もできないくやしさに泣いているのだった。


(ここまで来たのに……。結局けっきょくあたしじゃダメってこと? あの人みたいに自分の大事だいじな人をまもりたいって、今日まで頑張がんばってきたのに……全部無駄むだだったってこと? マシーナリーウイルスに感染かんせんすらできなかったあたしじゃ……ダメ……なの……?)


ジャズがおさなころに見た――。


仲間なかまのために、たった一人で一万の大軍たいぐんへ向かって行ったアン·テネシーグレッチにあこがれ、今日までおのれきたえてきた。


マシーナリーウイルスによって機械人形にんぎょうにも適合者てきごうしゃにもなれず、ただ地道じみち努力どりょくすることだけが自分ができる唯一ゆいいつのことだった。


しかし、それは何のやくにも立たなかった。


親友しんゆうに死んでほしくなくて、後先考えずに密入国みつにゅうこくしてみたもののこのざまだ。


自分が今までやってきたことなど何の意味いみもない。


このまま親友と叔父が命を落とし、ふたたび戦争が始まるのを見ていることしかできないのだ。


「くそッ! くそぉぉぉッ!!」


無駄だとわかっていながらもあばれるジャズ。


ヘルキャットもアリアもそんな彼女を見ていられないのか、顔をけている。


「お前が負担ふたんに思うことなどない。このことをかてに次の時代をきずいてくれ」


そういったブロードがジャズに手をかけようとした瞬間しゅんかん、突然その身体が吹き飛ばされる。


「……勝手かってに押し付けるなよ」


ブロードを吹き飛ばしたのは、そう――。


「あんたたちがのぞむ時代をジャズにもとめるなッ!」


動けなくなっていたはずのミックスだった。

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