第25話 初デート?
お互いの服装が思ったより汚れていることを改めて認識した。
もちろん、ミーチャは最後まで抵抗していたけど、一言で態度が変わった。
「じゃあ、ミーチャの服は要らないの?」
「えっ!? 買ってくれるの? じゃあ……汚い、でいいかな」
絶妙に認めようとはしないけど……うん。十分に汚いと思う。
まぁ、どっちにしても替えの服くらいはないとね。
ミーチャと服を買うために一緒に出かけることにした。
「フフッ。初めてのデートね」
「デートなのかな?」
「デート、デート」
「デートって何?」
ミーチャは僕の腹にそれは見事なストレートパンチをヒットさせた。
素直な疑問がミーチャを傷つけてしまったようだ……。
「ぐふっ……デートです」
「宜しい。行きますよ」
痛めた腹をさすりながら、ボリの街中を歩いていく。
最近は何度も行ったり来たりしているせいか、街が小さく感じる。
それにしても、ミーチャと出歩くのは久々な気がするな。なんだか、凄く嬉しい。
それに商い以外の買い物が出来ることに、少しはミーチャの笑顔は見続けられるかも知れないという自信がついた。
「ねぇ。ロスティはどんな服を買うの?」
実は服を自分で選んだ経験がないんだ。
公国にいた頃は、使用人が用意してくれたものを着ていたし、今だってトリフォンに手渡されたものだしね。
だから、自分で選ぶって言っても基準がわからないんだよね。
この服だって庶民の着る服ではないんだろ? 全然、分からないよ。
「今の服で十分なんだけど……」
「意外とせこいわね。折角、お金も稼げているんだし、使えばいいのに」
節約って散々、言っていたのはどこのどの人だ?
「そうは言うけどさ、これからのことを考えると溜めたほうがいいと思うんだ」
「いい? 今日はデートなんだから、普段の事を考えないの」
なんだ、その謎理論は。
まぁ、ミーチャが楽しそうだから便乗しておこう。
ミーチャの笑顔が見れるのは、僕にとって何よりも幸せを感じる瞬間なんだ。
最近、そう思うようになった。
「わ、分かったよ」
考えてみれば、脱出してからミーチャには世話になりっぱなしだ。
こうやって普通の暮らしが出来ているのもミーチャのおかげと言っても過言ではない。
折角だ!! 今日はミーチャにお礼をしよう。
「ちなみに、ミーチャはどんな服が欲しいんだ? 僕は結構、この街に詳しいから案内できると思うんだけど」
「そうね。やっぱり今は冒険者用の服かしら」
「冒険者か……」
冒険者用の服というのはとにかく丈夫に作られている。
そのための専門店もあり、値段次第では様々な付与がついている服も売っているというのを聞いたことがあるな。
とりあえず、この街で一番人気のある専門店に向かうことにした。
その店は冒険者ギルドの向かいにあるだけあって、多くの冒険者が装備品を探し求めて集まっている。
「ミーチャ。まずはこの店で探してみようよ」
「え、ええ。そうね」
あまり気乗りしていないミーチャだったが、冒険者の服を買うなら、ここが一番のはずだ。
癖で『買い物』スキルを発動したが、あまりお買い得品は多くはなかった。
ここでは商いは難しいようだ。
今回はスキルの出番は少なそうだ。
店はかなりの大きさで、店内もかなり広い。所狭しに置いているわけではなく、商品が見やすく展示されている。
商品は戦士や魔法使いなど、冒険者のジョブで分けられている。
ミーチャとは、もちろん魔法使いのエリアに向かった。
並んでいるのはローブが中心だ。付与がついているのは流石に高いな。
「どれがいいかな?」
「これだけいっぱいあると迷うわね。これ? なんか違う……」
そんな感じで店内を回ったが、結局見つけることが出来ず、『買い物』スキルで見つけることにした。
スキルが教えてくれる冒険者の服を何着か集めて、ミーチャに選んでもらうことにした。
よく分からなかったから、店中から選ぶことにした。
赤く光るものだけを選ぶから、そんなに時間はかからなかった。
「この中で気に入ったやつはある?」
「そうね……私は闇魔法を使うから、敵を撹乱させるために防御力より素早さを重視したいのよね。これなんか、いいかも」
数着の中から選んだのは、黒装束だった。
それにはでかでかと『素早さ付与』と書かれていたプレートが添えられていた。
「とりあえず、試着してみたら?」
「そうね」
ミーチャが試着している間、他の商品を物色していた。
「おっ!! これは……」
手にしたネックレスを見て、一発で気に入ってしまった。
綺麗な宝石がついたシンプルな作りのネックレスだが、『魔力付与』がついているからミーチャにピッタリだ。
少々値が張るものだけど、プレゼントとしてちょうどいいな。
しばらくすると、ようやくミーチャの試着が終わったみたいで、試着室から手招きをするミーチャの姿があった。
「ど、どうかな?」
「すごく似合ってるよ!!」
黒装束から腕や太ももは眩しいほど出ているため、見ているこっちがちょっと恥ずかしくなってしまうほどだ。
それでもミーチャの褐色の肌にすごく似合っている。
「そ、そう? でも、結構露出が多いよね? こんなんで本当に身を守ってくれるのかしら?」
その疑問はおそらく誰にも答えられないだろう。
この店にはビキニアーマーなるものが売っているが、それはこの店でトップクラスの防御力を誇る高級品だ。
肌の露出が多いのに防御力が高い? ……謎だ。
「じゃあ、それにこれを下に着てみたら?」
「それは何?」
「鎖帷子だよ。全身にピッタリと合うタイプのだよ。軽いし、守備力も上がりそうだ」
「まるでお店の人みたいね。じゃあ、ちょっと着てみるね」
しばらく待つと試着室のカーテンが開いた。
「ど、どう?」
「似合ってるけど……ちょっとエロいかも」
「エ……っ!!」
鎖帷子がまるで網タイツのように見えてしまう。それが黒装束と合わさるとなんとも言えないエロさが漂う。
「ロスティはいいと思う?」
そんな格好で、上目遣いで聞いてくるものだから、胸が跳ね上がってしまった。
「も、もちろんだよ。ミーチャは元がいいんだから、なんでも似合うよ」
「うん。ありがとう」
二人の間に少しいい雰囲気が流れた。
「それで、それはいくらなんだい?」
「二百万……」
「に、ひゃく? ちょっと手が出せないな……」
手元には220万あるけど、200万は厳しいな。ミーチャに申し訳ないけど、諦めてもらおうと声をかけようとすると、見知らぬ男が声を掛けてくる。
「お前は……」
その男はミーチャの姿を見て、驚いている様子だった。
一体、どんな関係なんだ?
胸騒ぎがした。
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