第20話 side タラス②
ロスティがスキルを使って、まさに金稼ぎをしようとしている頃……。
「昨晩も燃えちまったぜ。まさか、忌み子とこんなに相性がいいとはな。意外だったぜ」
体に若干の疲労感を残しつつ、朝のコーヒーを飲む。これがオレの日課だ。
女を抱いた次の日のコーヒーは格別だ。
ロスティが逃げ出したって聞いた時は、せっかくの楽しみが台無しになったとショックを受けたもんだ。
その腹いせに忌み子を蹂躙してみたが、意外と従順な姿に感心しちまったな。何をやっても、反応がないんだからな。あれは、王家でも相当、きつい仕打ちを受けていたに違いない。
でもよ。それが新鮮な感じで燃えちまったなあ。オレにそんな趣味があるとは新発見だった。
さてともう一勝負してくるかな……。
忌み子を監禁している部屋に行くと、見張りをしている部下のドランが下卑た笑いを浮かべていた。
「タラス様。昨晩はかなりお楽しみだった様子。外までタラス様の声が漏れておりましたよ」
普通、そんなことを言うか? 全く、顔もそうだが、言葉も緩みっぱなしのやつだな。
「まぁ、オレが飽きたら、お前たちも楽しむがいい。といってもしばらくは楽しむかも知れないな」
「おお。忌み子はそんなに良かったですか? 早く俺達もあやかりてぇものです」
「そのうちな」
ドランに鍵を開けてもらうと、忌み子がベッドに座りながら、ボーッとしていた。格好は昨夜から変わっていないのか。
はだけた服から裸体が曝け出していて、オレの性欲を否応なく刺激してくる。
「分かっててやってるのか? だったら、相当なアバズレだな。忌み子!!」
我慢できずに、貪るように忌み子の体を弄ぶ。
「昨日、今日で流石に疲れたな……ちょっと寝るが、余計なことをしたら、どうなるか分かっているな?」
相変わらず反応がない。オレにビビっているのか? それともロスティがいなくなったことがショックだったのか? まぁ、どっちにしろ、黙っているうちはオレも楽しめそうだな。そのうち、声を上げさせてやるからよ。
……どれくらい寝たんだ? 扉を強く叩く音で目が覚めた。
「うるせぇな」
体を起こしたが、何か違和感がある……忌み子がいねぇぞ!!
「どこ行きやがった!? それにしても、この人形は何だ?」
オレの横……忌み子がいた場所には、一体の不細工な人形が置かれていた。すでに形は変形していて、口があった場所には大きな穴が空いていた。
気持ちわりぃ人形だな。手にした瞬間、遠くに投げ飛ばした。
その間もずっと扉が叩き続けられていた。
「うるせぇ!! 開いてるから、入ってこい!!」
するとノックは止み、恐る恐るという様子で覗き込む顔があった。ドランだ。
「すみません。急だって言うもんですから……お邪魔じゃなかったですか?」
「それで? なんのようだ?」
「はぁ。それが公主がタラス様をお呼びだとか」
くそ。こんないい時間を潰しにきやがって。これからまた楽しもうとしていたのに。
「ところで。忌み子はどうした?」
「どうしたと言われましても……ずっとタラス様とご一緒だったのでは?」
どういうことだ? この部屋にまだいる? いや、そんなわけはない。となると……窓から外を覗き込む。
「まさかな」
突起物もなく、高さも何メートルもある場所だ。さすがにここから飛び出せば、タダじゃ済まないはずだ。
そうなると……。
「てめぇ。白状しろ!! オメェ達が遊びたいからって、オレが寝ているうちに浚いやがったな」
「ひいい!! それはあんまりだ。オレたちはタラス様のお楽しみの声を聞いてもずっと我慢してきたんですぜ。そんな事するんだったら、そんな手の込んだことなんて……」
する訳ねぇか。こいつらにそんな知恵があるわけがねぇ。だったら、どこに行っちまったんだ?
とりあえず、親父のところに行くか。
「おい。忌み子を探せ。多分、この部屋のどこかにいるはずだ。いなかったら……いや、とにかく探せ!!」
「はい!!」
ちっ!! 厄介なことになっちまったな。忌み子といえども、王族だ。いなくなっちまったなんて知れたら、かなりマズイだろうな。
とりあえず、シラを切っておいたほうがいいな。
親父の執務室はオレの部屋からは反対側になるから、かなり遠い。
「ちっ。面倒だな」
いつもならメイドに抱きついてやったりするが、今はそんな気分にはなれねぇな。どうもダメだな。忌み子を抱いてから、どうも頭から離れねぇ。
どうなってやがんだ。
「親……父上。お呼びですか?」
「来たか。だが、もう少し待て。ミーチャ姫がすぐにやってくるだろう」
いきなりかよ。あいつらが上手く見つけてくれていればいいけどな。でもよ。昨夜と今朝のことを話されたらマズイか?
いや、大丈夫だよな。なんていったって、オレは後継者だ。忌み子はオレの婚約者になるんだ。問題があるはずがねぇ。
そんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
「ミーチャ姫が来たようだな。タラス、開けてやれ」
「あ、ああ」
オレは祈るような思いをして、扉の外に忌み子がいることを願った。
「そりゃ、そうか」
「何か言ったか?」
「な、なんでもないです」
扉の外にいたのは、親父の執事だった。オレに会釈をしてから、ゆっくりと部屋に入り、親父に何かを耳打ちしている。親父の表情がみるみる変わっていくところを見ると、ドランは失敗したみたいだな。
「タラス!! 何か知らないか? ミーチャ姫がいなくなった」
やっぱりか。なぁに、シラを切れば……。
「下手な嘘はつくなよ。言っておくが、お前と手下が何やら動いているのは全て知っているのだぞ。当然、ミーチャ姫を監禁していることもだ」
「な……」
なんで、親父が知ってんだ?
「お、オレも知らねぇよ。気づいたら、いなくなっていたんだ。本当だ。なんだったら、ドランに聞けばいい。オレは嘘をついてねぇぜ」
……親父はつかつかと近寄ってきて、オレを殴り飛ばした。反応が出来なかった。『剣士』スキルを持っているオレでも。
「馬鹿者が!! 事の重大性が全く分かっていないな!! ミーチャ姫はどんな形でも、この国には無くてはならない存在なのだ。くそっ!! タラスの横暴を見逃していたのは失敗だったな」
好き勝手言ってくれる。てめぇだって、忌み子のこと、散々嫌ってたじゃねぇかよ。いなくなったことはオレの責任じゃねぇ。親父が部屋を与えて、自由に行動させていたのが悪いんだ。
「なぁ、父上。いなくなったのは良かったではないですか。もう一人、王家から貰ってくれば。父上だって、忌み子が嫌だって……」
もう一度、殴られた。親父の拳が全く見えなかった。どうなってやがるんだ?
「お前には分からんのだ。忌み子とは言え、あれをもらってくるのに、どれだけ苦労したか。とにかく、ミーチャ姫が見つかるまでは、お前は謹慎だ。この屋敷から離れることは許さぬからな」
ちっ。まぁいい。見つからなかったら、オレ好みの女を婚約者にするまでよ。忌み子なんて……ちっ、いつまでも頭にちらつきやがる。
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