5 仁朗の誠意にほだされて、関係が進展する

 仁朗の仕事が休みの日に二人で買物をして、その帰りに芹菜は家に誘った。母親は出掛けていて、夕食を一緒に食べようという事になっていた。

「ねえ、仁朗。私が2年前に言った事覚えてる?」

「ああ、痩せるってことだよね。あと5キロだけど、ここからが大変だよ。」

「よく頑張ったね!これまでの御ほうびをあげるね!」と芹菜は言って、彼に跳び付きキスをした。彼は呆然と立ち尽くし、真っ赤な顔をしていた。

「び、びっくりした!芹菜がキスしてきて…すごく感激!」

「仁朗の私への気持ちは変わらないんだよね。だから、キスしたの。」

 それから彼は頻繁に芹菜の家に来るようになり、二人は母親の前でも平気でべたべたとするようになっていた。

「あなたたち、仲がいいわね。うらやましいわよ。ねえ、仁朗さんが良ければ、この家に住めば良いじゃない。芹菜はまだ学生だから、結婚はまだだけどね。」

 母親がいきなり切り出してきて、二人は動揺していた。

「ママ、何を言い出すのよ。仁朗さんに失礼だよ。」と言うと、

「お母さんと芹菜ちゃんが良ければ、僕は一緒に住みたいです。」と彼は答えていた。自分から言い出せない不甲斐なさはあるが、それが彼の良い所なのかと思う芹菜であった。


仁朗が引っ越して来た晩、芹菜は彼の部屋にいた。誠意ある態度で接してくれる彼に対して、どうしても話して置かなければならない事があった。

「仁朗さんは私の過去を知っていて、そんなだらしない私が嫌じゃないの?」

「過去は過去でしかないよ。僕はずっと芹菜ちゃんが好きだった。男に誘われて付いて行く芹菜ちゃんは嫌いだったけど、だまされて汚された芹菜ちゃんが可哀そうで、僕しか救えないと思っていた。今こうして僕のことを思ってくれるだけで幸せだし、これからも好きでいてほしいから。」

 彼の優しい言葉に、芹菜は涙をこらえていた。

「こんな汚い私で良いなら、抱いてほしい!私も仁朗さんが欲しい!」

 芹菜が彼に抱き付いてキスを求めると、彼は包み込むように抱いていた。芹菜にとって、24歳にして初めて知った愛される事、愛する事の喜びであった。

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