2 居酒屋のバイトで知り合った城野晴臣とデートする
居酒屋のバイトにも慣れ、いつまでも古橋の家に世話になっている訳には行かないと、芹菜は考えていた。また、アイドル活動も思うようにいかず、何のために東京に来たのか悩んでいた。そんな時に声を掛けてきたのが、
「君、可愛いね。俺のタイプ!これから付き合わない?おごるよ!」
「困ります。私はそういうの、嫌いだから!」
芹菜はもう男にはこりごりで、しばらくは付き合う気もなかった。ところが、城野は一人で毎晩のように来て、しつこく誘ってきた。
「私と何をしたいんですか?私のどこが良いんですか?」
「君のすべてを、直観的に好きになった。明日でも明後日でも、デートしよう!」
芹菜は面倒になって、1回ぐらいはデートをしても良いかなと思っていた。
デートの日、城野は車に芹菜を乗せて湘南まで走らせた。車の中で会話の時間は沢山あり、彼女が地下アイドルである事、住む所がなくて居候している事などを聞いた。海岸線のカフェに着く頃には、彼女もすっかり打ち解けていた。
「芹菜ちゃんは、彼氏はいるの?」
「今はいない。私、あまり男運がないみたいで…。」と芹菜はもらしていた。
城野は良からぬ事を、頭の中に巡らせていた。
『何がアイドルだよ。ちょっと可愛いくらいで、そんな甘い世界ではないぜ。居候してるって、どうせパトロンか何かだろう。俺だって、1回やったらさよならだよ。今日はまだ警戒されてるけど、どこまでできるか試してみるか。』
カフェを出て海辺を二人で歩き、岩陰に腰を下ろした。城野は彼女の肩を抱き、反応を見ていたが、特に嫌がる訳でもなかった。そこで強く抱き寄せてキスをしようとすると、彼女は下を向いたまま嫌々をしていた。
「キスは嫌なの?だったらしないけど、肩は抱いてても良い?」
「初めてのデートだし…。私は中学の時から、男の人に嫌な事をされてばかりで、キスした後が怖いの。だから、城野さんともここまでにしたい!」
城野はこの場は引き下がり、素直に帰る事にした。二人は車の中で無口になっていたが、城野は片手で彼女の手を握り運転していた。
「芹菜ちゃんを前よりも好きになった。また会ってくれるよね。」
城野の言動には偽りがないと思い、芹菜は誘いを承諾した。
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