彼女たちの24歳~朝比奈杏編~

1 杏と夏梅木尊とは同士の仲で、法律家を目指している

 朝比奈杏は大学を卒業後、法科大学院に進み法律家を目指している。大学の時に予備試験を何回か受験したが、いずれも不合格で大学院を選んだ。現在2年生で、来年の春に修了し司法試験の受験資格を得られる。

 大学の同期の夏梅木なつめぎたけるは、予備試験に4年生の時に合格した後、司法試験に2回挑んでいる。杏とは4年生のゼミで知り合い、友人として付き合っていた。一緒に食事をしたり、飲みに行ったりして議論をぶつけ合う仲であった。お互いに恋愛感情はなく、良き理解者としてそれぞれの部屋で一晩を過ごす事もあった。

 

 5月の司法試験に臨んだ尊は、杏を呼んで部屋で慰労会を行っていた。

「尊君、試験の手応えはどうだった?」と杏が訊くと、

「まあまあかな。2回目だからな、受かりたいよ。」と素直に答えていた。

「合格発表は9月か、その間は遊べるね。うらやましいよ。彼女とも会えるしね!」

「そうかな?彼女が就職してから、あまりうまく行ってないんだよな。俺は勉強で忙しくてたまにしか会えないし、中途半端な関係が2年続いているから。」

 尊は自分を責めながら、彼女に思いを馳せているように、杏には見えた。

「今の彼女は何人目なの?前にも聞いたことがあったけど、君は女好きだよね。」

「女好きはひどいな!高校からだと、3人目だよ。決して多くはないと思うな。」

 杏は急に関心を持ち始め、彼の過去の恋愛について訊いてきた。

「何か尋問みたいだな。杏ちゃんが、そんな事に興味があるとは思わなかったよ。いつも恋愛を馬鹿にしているみたいで、男が近寄りがたいオーラを発出してるよね。」

「ひどい事を平気で言うな!私だって恋をした事があるし、今でも恋愛への憧れはあるよ。こんな可愛い女の子を放っておく男どもが情けないんだよ。」

「放っておいてごめん!杏ちゃんは同士であって、どうしても女性として思えないんだよね。俺の詰まらない話をしても良いけど、杏ちゃんの話も訊かせてよ!」

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