年下男子×年下男子
ミケ ユーリ
第1話 お持ち帰り
「……分かったわよ……うん、話するだけね。ヨリ戻す気なんてサラッサラないから。私が絶対浮気許さないの分かってやっといて。……うん……いいよ、こんな雨だし明日で……あ! あ、ごめん、何もない。うん、明日」
電話を切り、目に入ったものに駆け寄ってみた。
2月の末のただでさえ寒い夜に、土砂降りの雨が降っている。雨が広がる路上で、コンビニ裏の壁にもたれて座り込んで寝ている私服姿のコンビニ店員を見つけてしまった。近付いてみる。やっぱり寝てる。
あ! やっぱり! あのイケメンくんじゃん! なんでここで?! 何自分のバイト先で、路上で、寝てるの?!
私の職場近くのコンビニだからほぼ毎日利用している。こんな寒い雨の中で、死なれでもしたら……見つけちゃったもんはしょうがない。
男の顔にこだわる私は、好みのイケメンには超絶優しい。
「
肩を揺さぶりながら声を掛けてみる。こんな状況でよくもまー寝られるわね。ほんと、変わった子だわ。
服にも雨が染み込んでいる。こんなんでもしも朝まで寝てたら本当に死んじゃうとこだわ。
須藤くんがうっすら目を開けた。
「あ、起きた? 家に帰って寝なさいよ。相当寒いでしょ」
「あー、うん……おう、さみっ」
ブルっと震えがきてるみたい。本当に、この状態でよく寝てたわね。
しゃがんでいた私が立ち上がると、須藤くんも立ち上がろうとしてよろめいた。
「もしかしてお酒飲んでる?」
「飲んだー」
「須藤くんって
「20歳だよ……」
フラフラじゃん……。私の肩に腕を回し、私に体重をかけてなんとか立っている。重い。ガリガリに痩せてるけど、それでも身長は高いし十分重い。
傘が外れがちになる。私まで濡れちゃうじゃない! この寒さの中! 長い髪の毛先はすでに濡れている。
「なんかあったの? こんなになるまで飲むなんて。1人で飲んでたの?」
「……いっぱい聞くなあ……」
「いや、2点しか聞いてないんだけど」
やっぱり何かあって、荒れてるのかしら? 若い子がやけ酒に走るなんて、失恋とか?
「やらせてくれたら、教えてあげる」
「はい?」
「お姉さん、家どこ?
「え……うん、八丁目だけど」
え? 何言った? さっき何言って今家の場所聞いた? 聞き間違いだよね? ただのコンビニ店員と常連客だよ? ねえ?
「八丁目か……遠いなあ……酔いが醒めるよ」
「醒ました方がいいと思うけど」
「ビールとか買ってこうよ」
と、フラフラとコンビニを指差す。
「え? そんなボトボトでお店入る気? 2〜3本ならうちにあるけど」
「お、お姉さんも飲めるんだ。2〜3本じゃ足りないねー」
ボトボトのフラフラで須藤くんがコンビニに入って行く。
「いらっしゃいま―――えっ、須藤どうしたの?!」
店員さんが驚いている。そりゃ言われるわ。
でもまあ、自分のバイト先でお酒買おうってんだから、変な下心はないのか。このコンビニのオーナーの田中さんと私のおばあちゃんが昔からの友達なのも須藤くんは知っているはずだ。
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