サンタさんの過去
夏
サンタさんの過去
今日は年に一度のクリスマス。
わしは世界に一人しかいないサンタクロースだ。複数人いるというのは嘘。
それこそ、真っ赤な———————
わしが何百年も前に殺してしまった、一人の子供の返り血のように。
□□□
かつてわしは聖人だった。
その子を殺してしまった後、証拠を隠滅しようと必死になっていた。それも神様は見ていたのだろうな。
返り血を浴び真っ赤に染まった服のまま、わしは呆然と足が動くままに教会へ向かった—————が、足を踏み入れたとたん、まばゆい大きな光がわしを襲った。その真紅の光はいっそ神々しいほどで、わしは、「神の怒りだ」と直感した————
そこではっと目が覚め、自分のやったことを自覚した。
—————死のう。
考えるより先に体が動いた。
足は十字架へと向かっていった――が、十字架を前にしたとたん足は動かなくなった。
その直後、足からの激しい痛みがわしを襲った。
あまりの痛みにわしは床に転がり、のたうち回った。
見上げたステンドグラスのイエス・キリストと目が合った時、イエスは言った。
「You can't die!《お前は死ねない!》」
—————償え。永遠に。
□□□
あの日、返り血と光に染まった服。罪の証を背負って今年も。
「——Ouch!」
あの時の痛みは今も緩やかに。
トナカイが引くソリに乗ると、ましになった。
シャンシャンシャンシャンシャンシャン……
子供たちがサンタを見たことがないのは、彼———サンタ自身がまだ自分を信じることができないからかもしれない。
〈終〉
サンタさんの過去 夏 @gozaemon
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