第204話 二人に聞かれるのはちょっと嫌かな

 レオは道中、ゆっくりと楽しむつもりだったようです。

 でも、予定が狂ったのかしら?


 この黒のゴシックドレスを見て、第一声が『似合ってる。かわいい』と抱きしめてくれたのも褒めてくれたのでいいとしましょう。

 『それ、大変そうだね』の言葉が意味するところ……。

 つまり、脱がせたいってことですのよね?


 ええ。

 陸路を移動すれば、グティの機内は狭いですから、不可抗力というものがあると思います。

 それは仕方ないと思いますわ。

 求められたら、拒めませんもの。


 ところがレオも私も考えていなかったことが起きました。

 ナーシャのアリアドネ……私達の予想していた以上に滞空能力が思ったよりも高かったのです。

 結果、グティを抱き上げ、現地までの移動。

 つまり、空路が可能になったのです。

 当然、空の旅に変更となりました。


 空の旅で『おいた』をしたら、妹達に筒抜けですもの。

 外でも求められるままに致したことがありますけど、さすがに妹達に知られるのは無理ですわ。


「レオ! ムリ! レオ! ザマア!」

「うるさいぞ」

「レオ! プンプン! レオ! ハゲル!」

「もう許さないぞ」


 怒っているように見えて、レオとモコはじゃれているだけ。

 『このこの!』と言いながら、モコのもふもふでふわふわとした魅惑のボディに顔を押し当て、堪能しているだけですわ。

 ルーと私はそんな一人と一匹(?)に軽く、溜息を吐くと眼下に広がる広大な荒れ地とその先に見える小高い丘に視線を向けます。


 レオに後ろから、抱きしめられた状態で自由に動けないんですもの。

 あら? あれがデファンデュかしら?

 この荒れ地と化しているのが元々はカシエと呼ばれる村落があった場所……?

 思っていた以上に酷いですわね。


『姉さま~、もうすぐ着くわに~』


 ナーシャの声が聞こえてきたのでそろそろ、着陸するみたい。

 レオはまだ、モフモフから抜け出せないようで世話が焼けますわ。




 ナーシャとレライエが乗るアリアドネはグティを下すと再び、空へと戻っていきます。


 グティ――グンテルは汎用性の高いジークフリートを元にコストダウンを図った機体です。

 色々な物が省かれた結果、まず、全身を覆う亀竜の外骨格で構成された甲冑のような外装が取り除かれました。

 その為、頭部は良く言えば、すっきりとしています。

 のっぺりとした顔に人の口に似た排気口と左右三百六十度、上下に百八十度動かせる単眼モノアイだけです。

 少々、不気味にも見える見た目すわね。

 単眼モノアイ魔動騎士アルケインナイトは実は少数派なのですけど、私のペネロペとアリアドネにも採用されています。


 既に上空へと飛び去ったアリアドネは全身を雪のような純白で塗装した美しい機体です。

 鋭い一本角が生えた頭部や関節部と胴体の一部は黒く塗られ、ところどころに真紅のラインがアクセントとして、引かれています。

 全体のフォルムは細身で女性的なデザインと言えるでしょう。

 背には飛行時に展開される一対の大きな翼が装備されていて、折りたたむことで地上での行動にも問題ないように考えられています。

 とはいえ、空戦を主体として考えられているので地上戦は不得手かもしれませんけど。

 現状の完成度は六割程度と未完成。

 完成時には両腕を回転式多銃身魔導機関砲アルケイン・ガトリングで武装し、翼にも『炎の氷柱』を装着しますから、抜かりありませんわ。


 でも、実はアリアドネの真骨頂は戦いではないのです。

 ナーシャは『翼ある鰐』の姿を持っていることから、直接的な戦闘が得意と思われがちですが、彼女がもっとも得意とするのは『る』こと。

 る力は中々に特殊な力と言えるでしょう。

 ナーシャはで力を行使します。

 対象の物を探し出したり、自分を中心とした四方の生命反応を感じるのはその力の一端。

 これを強化するのがアリアドネの本当のお仕事なのです。


 ナーシャの『る』とレライエの『癒す』を活かすべく、同行してもらったのですけど……。

 この惨状では『癒す』力でもさすがに厳しいですわね。


「リーナ。どうしようか?」

「そうですわね。まずはアリアドネが『て』から、考えた方がいいと思いますわ」

「分かった」

「レオ! ワカッタ! レオ! スナオ!」

「逆に怪しいへびー」


 私もそう思いますわ。

 レオが素直に言うことを聞くので怪しいとは思いますのよ。

 でも、狭い空間でぴったりと後ろから抱き締められて、身動きが出来ない状態です。

 素直に聞いている振りをしているだけ。

 アリアドネという楔が取れる訳ですから、ずっとレオに撫で回されないとも限りません。

 生殺しですわね……。

 さすがにレオもそのような不埒なことをしないとは思うのですけど。

 しないですわよね?


「さすがにね。二人に聞かれるのはちょっと嫌かな。それにうるさいのがいるしさ」

「モコ! ウルサクナイ! レオ! スケベ!」

「ちょいと知的でヘビーなルーにそれはないへびー」


 読まれていたみたいですわ。

 危なかったかしら?

 モコとルーがいなかったら、きっとされてましたわね。


 レオのたくましい腕で後ろから、胸をやや乱暴に愛撫されて、大事なところも彼の手が暴いてきて。

 私が根負けして、『やぁ。ここではなくて、外でして』と言い出すのを待っているのでしょう?

 それで外に出たら、服を破かれて、レオは赤ちゃんみたいにおっぱいを吸ってきて。

 抗えない私を抱え上げて、『僕を咥えて離さないなんて、淫乱なお姫様だね』って言われながら、自然の中で激しく揺さぶられて、何度も愛されてしまいますのね。


「でも、最後は顔にかけるよりも膣中なかにくださいませ……んっ?」

「いやいや、リーナ。さすがに僕でもそこまでは……どうかな」

「リーナ! エッチ! リーナ! ポンコツ」

「姫ちゃん、妄想がヘビーへびー」

「ふぁっ!?」


 その後、アリアドネから『姉さま~、南わに。遠くないわによ』という声が聞こえてくるまで針のむしろに座る思いでしたわ。

 だって、レオは『そこまでは』と言ってましたのよ?

 どの口があんなことを言ったのかしら?


 しっかり、胸をマッサージされたのですけど!

 されすぎて、変な気分になってますもの。

 おまけに『今はおっぱいしか、無理なんだ。ごめんね』と耳元で囁いてから、耳朶を甘噛みするのはやめてくださいませ。

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