第181話 特徴的な色が表れるので見ているだけでも飽きませんわ
五つの炎の塊が螺旋を描きながら、さながら深紅の竜巻となって、襲い掛かって来ます。
やってくれましたわね……。
レオは微妙に手加減を知りませんもの。
手加減という単語が彼の辞書に存在しない可能性も否定出来ませんわね。
刃から凍気を発する
魔物の舌のように赤く蠢いていた業炎は赤い輝きを宿したオブジェクトと化しています。
まるで私を取り巻こうと美術品を置いたかのように……。
ただ、一部の炎が消しきれなかったようでドレスがところどころ、焦げたり、破けたりしましたけど。
気のせいかしら?
ものすごく、意図的に布地を燃やされた気がします。
「もしかして、わざとやりましたのね?」
「な、なんのことかな」
微妙に目が泳いでますわ。
わざとですわね。
焦げた部分が胸や太股だけを狙っていますもの。
膝丈まであったドレスがミニスカートになってしまいました。
胸元からは下着が見えていて、油断したら中身が出そうです。
こんなにも器用に狙って、魔力を調節出来るのなら、手加減も出来ると思うのですけど。
「もう終わりには……」
「しませんけど? まだ、氷しか試してませんでしょう?」
レオの視線が見ているところは分かります。
本人はバレていないと思っているようです。
見られても彼だから許せるのですけど、それはそれ! これはこれ! なのです。
思いつく限りの魔力を流して、試してみました。
属性ごとにそれぞれ、特徴的な色が表れるので見ているだけでも飽きませんわ。
ただ、私の得意不得意が刃にも影響するので威力も氷、闇、毒が群を抜いて高いのですけど。
「便利だけどさ。無属性の魔力を流すとどうなるかな?」
「無属性ですの? それは考えてませんでしたわ」
無属性の魔法は属性に依存しない為、コンスタントに威力を発揮出来る利点があります。
その反面、器用貧乏とも言えるでしょう。
属性の相性を考え、弱点を突く方がより大きな効果を期待出来るからです。
「試す価値はありそうですわ」
「無属性だから透明だったら、どうする?」
レオの考えは冗談なのでしょうけど、属性が無い以上、どのような色合いになるのか、気になりますわね。
無属性の魔力を注ぎ込むと魔水晶が色を失い、何も注いでない時と同じ無色透明になりました。
そして、発生した
「普通の金属みたいに見えるね」
「見た目はそう見えますわね」
出現した刃は金属光沢を持ち、普通に鍛造された金属製にしか見えません。
でも、これは間違いなく魔力が形を成した物なのです。
「見た目は金属みたいだけど。これってさ、物理属性じゃないよね?」
「ええ。属性としては魔法でしょうね」
「そっか。じゃあ、魔法が効かない相手には対処出来ないか」
彼が心配しているのは特殊な能力を有したモノがいてもおかしくはない世界だからでしょう。
物理的な攻撃を一切、受け付けない魔法生物というのが存在しますし、逆に魔法攻撃を寄せ付けない生物も実在していると言われています。
実際、私の
あらゆる可能性を考慮に入れるべきですわね。
「その場合は蹴ればいいのでしょう?」
体を回転させある程度の遠心力を加えてますから、いくら私の体重が軽くてもそれなりの重さがあるはずなのですけど……。
「ダメだよ、リーナ。そういう恰好は僕以外に見せないで」
レオに軽く足首を掴まれていました。
本気で彼を蹴り飛ばそうとした訳ではありませんけど、何だか悔しいのはなぜかしら?
「は、はなしてくださいません?」
股を大きく開いたままなのとやや痛みがあるので早く、放して欲しいのですけど!
その気がないようですわね。
かといって、彼の力が強くて動こうに動けません。
やっと放されたと思ったら、骨が軋むくらいに抱き締められ、軽く額に口付けを落とされました。
あまりの不意打ちに目を白黒させているうちに、また横抱きに抱えられています……。
もう、こうなってしまったら、逃げられませんわ。
「悪戯好きなうさぎちゃんにはお仕置きしないといけないよね」
レオの瞳に熱が籠っているみたい。
熱が入ってしまった以上、どうなるのかは分かっております。
ディナーの時間が遅れるのは確定ですわ……。
ただ、それは私が想像していた以上に激しかったのです。
破れたドレスを着たまま、声が出なくなるまでされるなんて、誰が想像しますの?
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