第139話 何かの罰ゲームかしら?
登場したドラゴンの数が増えてきて、作者が忘れそうなのでまとめ設定を書きました。
◇ ◆ ◇
はい、今日も皆様に何とも温かい視線で見送られているリリアーナです。
移動する時はお姫様抱っこをされ、座るのはレオの膝の上。
まるで彼に看護もとい介護されているような扱いですけど、こうなっているのは夜が激しいのが原因ですわ。
ですから、開き直ることにしましたの。
ええ、開き直りましたけど……恥ずかしいので俯くのくらいは許して欲しいですわね。
そして、レオの膝の上に乗せられて、お客さまとの面会。
何かの罰ゲームかしら?
「久しぶりじゃのう。と言ってもお主らは覚えておらんかもしれんがのう」
本来、謁見の間での接見が正しい判断なのですけど、相手が相手ですから致し方ありません。
急遽設けられた応接室での面会となりました。
年配の魔導師がよく身に付けているとんがりが特徴的な三角帽に濃緑色のローブをまとったご老人。
長い顎鬚を伸ばし、深い皺の刻まれたその顔貌はおとぎ話に出てくる魔法使いのお爺さんの姿そのままですわ。
朝方、ひょっこりと城門前に現れたこの御方。
人の姿をしていますけど、人ではありません。
一体、何しにいらしたのでしょうね?
「人の姿でこちらに来てくれたってことは身体の方はもういいんですか?」
「おかげさまでかなり、よくなりましてのう」
私は何も声を発していません。
発せないの方が正しいかしら?
昨夜の夕食時と同じく、しっかりと腰を掴まれているのです。
さすがに人目がありますから、もう片方の手がおいたをしたりはしないと思うのですが、油断は出来ませんわ。
それに昨夜の行為を思い出すだけで顔が火照ってきて、何かを喋るとあらぬことを口にしそうで危ないですわね。
「それでザルティスさん。何しに来たの?」
ストレートに聞きますのね?
男らしくて、まっすぐなところがレオらしくて、かわいい! なんて、言っている場合ではありませんわ。
本当にそれでいいんですの?
「熊の生き胆はよおく効きましてのう。この通り、元気でしてのう。儂にはここがありましてのう」
謎のご老人こと『深淵の緑竜』ザルティスは片手で顎鬚を撫でながら、もう片方の手でコンコンと三角帽を指し示しました。
ストレートに聞くのが正解でしたのね。
私が口を挟んでいたら、余計な腹の探り合いになって、読み合い合戦になったのかしら?
恥ずかしいことを思いだしたせいで固まっていたのが、結果として正解なのはちょっと悲しいですわ。
「うん。よく分かんないけど、よろしくね」
そう言って、邪心の感じられない爽やかな笑顔を振りまくレオに私とザルティスは思わず、顔を見合わせて、軽く溜息を吐いてしまいました。
🦁 🦁 🦁
そして、ザルティスを伴い、地下の研究施設を訪れています。
レオにお姫様抱っこされているのはいつも通りですわ。
これが恒例の行事のようで研究員の方々から、温かい視線を送られるので困惑しますのよね。
でも、お姫様抱っこの方が愛されていると強く感じられるのです。
気持ちがどちらを向けばいいのか、分からなくて不安定ですわ。
上目遣いでレオの顔を窺うと彼の瞳は優しく、私を見つめていて……
「もっとして欲しかった?」
「ち、違いますわ」
訂正! 優しい瞳ではなく、
そんなやり取りを小声でしているのにとても生温かい視線で見守られている気がしますの。
来たばかりのザルティスにまで生温かい視線を送られるのは気まずいですわね
「昨日、事故があったんだよね?」
「ええ、私達が去った後ですから、午後の武装運用試験で発生したようですわ」
「どういう事故ですかのう?」
知恵を貸してくれる老竜ザルティスの真の姿――ドラゴンとしての姿は凶悪そのものの面構えをしているのですけど、それは見かけだけ。
彼の真骨頂は知識と知恵を生かすことであって、戦うことではないのです。
「リーナが考案したペネロペの特殊兵装が暴走したって話みたいだけど」
「え!? そうでしたのね。オートクレールを参考にしたのがまずかったのかしら? 私はレオのオデュッセウスが暴走したと聞きましたけど……まずいですわね」
「なるほどのう。ふむふむ、つまりじゃのう」
レオの専用
私のはペネロペと命名されることになったのですけど、まだフレームしか完成していません。
それで両機の背に装備するべく、開発された特殊兵装の仮組が終わった時に問題が発生したというのが昨日のことだったのです。
オデュッセウスにはレオの近接戦特化をより活用出来る特殊兵装が開発されました。
二枚の翼の形をしたリアクターバインダーで魔力波を発生させ、これまでにない高速戦闘を可能にする予定でしたの。
ところが試験で起動させた途端、魔力波の発生が止まらず、結果オーバーヒートを起こして破損したそうです。
ペネロペには六枚の曲剣状のウイングバインダーを装備する予定ですけど、これはレオの機体と運用目的が異なります。
刀身にあたる部分を分離させ、思う通りに動かしながら、全方位攻撃を仕掛ける遠隔操作武装だからです。
そうは言ってみたのですけど、あくまでそれは完成した状態での話。
昨日の試験では見事に暴走し、完成間近だったロムルスがまた、調整に戻ったことでお察しいただけるとありがたいですわ。
レオが考案した水中型
「え? 何で?」
トリトンも無傷ではなかったのです。
あの状態では再調整が必要ですわね。
でも、頭上にはてなマークが浮かんで見えるほど不思議そうな顔をしたレオが、ちょっと小首を傾げる姿が見られて、幸せですわ。
かわいいんですもの。
見ているだけで胸がキュンキュンしますわ。
「リーナ、そんな顔で見つめられると我慢出来なくなっちゃうかもよ?」
「ふぇ?」
気付いた時には首筋に口付けされていて、しっかりと赤い痕を付けられていました。
本当、手慣れてますわ。
私もレオも互いにしか、経験がないはずなのです。
どうして、こうも翻弄されてしまうのかしら?
より一層の生温かい視線に囲まれて、居たたまれないのですけど。
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