第137話 駄猫のくせに生意気ですわね?

「んっ……」


 心地の良い風にゆっくりと瞼を開くと目に映るのは沈みゆく太陽。

 美しい情景は詩人であれば、美しい詩の一片でも思い描くのでしょう。

 残念ながら、そのような芸術的な才は私にありませんの。

 それよりも私の胸の上でたまにもぞっと動くレオうさに心が惑っているんですもの。

 彼はまだ、寝ているみたい。


 平和な一時ですわね。

 なんて、落ち着いている場合ではなくって!

 思い出しました。

 レオうさを連れ、部屋に早く戻りませんと大変なことになるのです。

 思い付きでうさちゃんに憑依したレオですもの。

 獣人の変身と同様に服を全て脱いでますわね。

 つまり、このままの状態で日没までここにいるとどうなるのか……火を見るよりも明らかですわ。

 彼の身体を他人に見られるのが許せませんわ。

 彼を見ていいのは私だけですもの。

 とはいえ、この丘はあまり人気のある場所ではありません。

 二人だけの貸し切りの空間のようで邪魔をされたことがないのです。

 特に立ち入り禁止の区域とした訳ではないのですが、少し妙ですわ。

 まさかとは思いますけど、過保護ですわね?

 (注:リリアーナの予想は強ち、間違っておらず、過保護な保護者が軽い結界を張っているのです)

 ただ、滅多に人が来ないとはいえ、絶対に来ない訳ではありません。

 早々に撤退しなくてはいけませんわ。

 それに服を脱いでいるのなら、手間が省けましたわ。


 転移の魔法で寝室に戻ると何も知らず、スヤスヤと寝ているうさちゃんをベッドの上に仰向けで寝かせてあげます。

 本当に気持ち良さそうに眠っていて、いつまで見ていても飽きずに見守っていられる自信がありますわ。

 見た目がかわいらしいうさちゃんだからではないと思いますの。

 確かにこのうさちゃんのキャラクターのぬいぐるみは好きですわ。

 ですが、それだけではないのです。

 レオが入っているから、いつまでも飽きないのです。

 本当にかわいいのですわ。


「でも、目が覚めたら、きっと驚きますわね」


 間もなく、日没。

 楽しみですわ。


 🦊 🦊 🦊


 夜の帳が下りて、寝室を照らすのは私が灯した魔法灯の薄明りのみです。

 目が慣れないとぼんやりとしか、見えないでしょう。

 現にレオは目を覚ましても状況が良く分かっていないようですもの。


「よく寝た……あれ? リーナ?」


 彼はベッドの上で身動きが取れないことにようやく、気付いたようです。

 元の姿に戻っていて、仰向けで寝ている。

 ここまでは普通ですわね。

 でも、全裸で手足をしっかりと魔法の鎖で拘束されてますのよ?

 おかしいですわ。

 あまり焦っていないなんて!


「見えてるし」


 何ということでしょう。

 私したことがうっかり、していました。

 私も彼も夜目が利くので薄明りで何ら、問題がないのを忘れてましたわ。


「それでリーナは何で足をにぎにぎしてるのかな?」


 あなたを食べる為よ!

 じゃなくて、これは将来の妻として、夫を教育しようとしているだけですわ。

 だいたい、この状況なのにレオのレオがものすごく自己主張しているのよね。

 これではまるで喜んでいるみたい。

 人は危機的状況に陥ると繁殖しようとする生き物だから……ではなさそうですわね。


「レーオー、これは何かしら?」

「あっ……うーん」


 そう言いながら、手元にある本のタイトルを良く分かるように見せつけると目を逸らしましたわ。

 『女王様は飼い猫を夜愛でる』というタイトルのこの本。

 レオ専用の本棚に隠してありました。

 それも巧妙に他の本の裏側にすぐに見つからないように……内容はその……タイトル通りですわ。


「レオにそういう願望があるとは思いませんでしたわ」


 彼の屹立したモノの裏側を這わすように足で撫でながら、そう言うとレオが『あふぅ』って、女の子みたいな声を出しました。

 ちょっとかわいくて、癖になりそう……いえ、これは教育ですもの。

 真面目にやらないといけませんわ。


「こんなに元気にして。駄猫のくせに生意気ですわね?」


 今日、よく分かりましたけど。

 ぬいぐるみに嫉妬して、ぬいぐるみのように抱っこされたい欲求って、要は甘えたいってことでしょう?

 何か、違う気がしますけど、本の真似をすれば、レオも素直に甘えられるはずです。

 心を鬼にして、やってみせますわ。

 ちょっと楽しくなってきたのは気のせいですもの。


 腰を下ろし、右足の裏でかなり、熱くなっている杭を撫でるように這わせ、左足で柔らかいモノに優しく、タッチしました。

 そこは敏感らしいのであまり、激しくするとレオも痛いでしょう。

 あまりやると潰れてしまいそうですから、危険ですもの。


「うっ……リーナ、それダメだって」

「なぁに? こんなので感じていますの? 何か、出てきていますわ」


 さらに熱を帯びて、固く大きくなってきた彼のモノから、透明な汁が沁み出してきたので指も使いながら、優しく、ゆっくりと時間をかけて、モノに撫でつけます。


「ねぇ、もう出そうですの?」

「うっ……あぅ、やばいって、そんなにしちゃ」


 そろそろ、頃合いではないかしら?

 彼のモノが反り返るくらいになってきて、息遣いも荒くなってきましたから、とどめとばかりにモノを両の足裏で挟んで上下に扱いてあげます。

 手や舌のように自由に動かせませんが、今のこの拘束されている特殊な状況が高めるのに役立っているはずです。


「我慢しないでほらぁ」

「ああっ……で、でるっ!」


 レオにしては珍しく、ちょっと情けない声。

 私だけが知っている彼の姿。

 私だけに見せてくれる……それだけで私も興奮してますのね?

 今更、気付きました。


 そして、大惨事になったということも。

 レオのレオから、勢いよく放たれた白い子種がそれはもう、元気が良すぎまして。

 足にべったりとかかったのは仕方ありませんわ。

 私も調子に乗って、攻め過ぎましたもの。

 それくらいは私も考えていましたし……足だけなら、ですけど。


「ご、ごめん……」


 レオが申し訳なさそうですわ……。

 たっぷりと私の髪や顔にまでかかりましたもの。

 当然、黒いドレスには白濁のシミがたくさんですし、お気に入りのベッドのシーツもええ、それはもう大惨事ですわ。


「ううん、レオは悪くないわ。私もやりすぎましたから」


 譲歩するようなことを言ったのが失敗だったかしら?


「夕食前にお風呂行かなきゃね?」

「え、ええ?」


 あら? おかしいですわ。

 拘束していたはずですけど!?

 普通にお姫様抱っこされているのですけど!?

 頭の中に疑問符がたくさん浮かんできますわ。


 そこからの記憶はあまり、ありません……。

 お風呂で『僕がきれいにしてあげるよ』と全身を弄ばれて、くたくたになったところをレオが満足するまで散々、愛されただけですもの。

 いつものことですわ。

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