第134話 このうさちゃん、おかしいですわよ?
その日の朝も心地良い太陽の光を浴びながら、ゆっくりと瞼を開くと目の前には何よりも大切な彼が……あら?
「レオ?」
互いに求めあうように夜通し、愛し合って。
そうして過ごした次の朝は互いの体温を感じられるよう、ぴったりと密着してますの。
抱き付いたら、レオもしっかりと抱き締めてくれて、寝たはずのですから。
それなのに彼の姿がありませんわ。
その代わりにそこにいるのは……
「うさちゃんですわね?」
愛し合って、そのままですから、いわゆる生まれたままの姿ですわ。
寝た時と変わっていません。
それなのに私が素肌のまま、抱き締めているのは真っ黒な生き物(?)なのです。
胸の谷間に挟まれて、すやすやとかわいらしい顔で眠っているのは黒いうさぎさんですわ。
おかしいですわね。
この部屋に野生の動物が入ってくるとは思えません。
お城の中でも上層に位置していますから、迷い込める場所ではないんですもの。
それにこのうさちゃん、おかしいですわよ?
四足で歩ける体型をしていませんし、縫い目があるような……。
これはもしかして、レオがデートの時にゲームでとってくれたあのかわいいうさぎのぬいぐるみではありませんの?
「え、えっと……前にもこういうことがありましたわ。あの時はレオが本来の力を取り戻しつつあったから、獣化したのだわ。では、これは一体……あんっ」
うさちゃんがもぞもぞと動くものですから、つい変な声が出てしまいましたわ。
素肌に直接、もふもふしているものが触れていて、それが泳ぐように動くんですもの。
その毛触りがものすごく心地良くて、ゾクッとしてくるのですけど、それよりもうさちゃんの腕が何だか、的確に胸を揉んでいるような……。
「あんっ……そこはくすぐったいからぁ、きゃは」
もぞもぞと身体を動かしながら、その愛嬌ある丸っこい顔でうさちゃんが私を見つめてきます。
その瞳の色は私やレオと同じ
つまり、このうさちゃんって……
『おはよう、リーナ』
「んっ? えっと……レオですの?」
顔を胸で挟まれているのに何だか、微妙に喜んでいるようにしか見えないうさちゃん。
いえ、レオですわ、このうさちゃん。
悪びれることなく、爽やかな朝の挨拶をしてくる念波の声がそうですもの。
どういうことかしら?
『リーナがこのぬいぐるみをギュッと抱き締めてたからさ。この身体だったら、リーナのおっぱいをすご……あ、あのリーナさん?』
「まぁ、それなら、そうと言ってくださればいいのに」
『気持ぢいいけどぐるじい』
色々なお礼を込めて、レオうさをしっかり胸で挟んだままギュウギュウ抱き締めてあげました。
気持ち良くて、声も出ないのかしら?
違いますわね。
声、出ませんものね?
ぬいぐるみのうさちゃんですから、口がバツ印ですもの。
言葉を喋る機能なんて、ございませんわ!
だから、魔力を使って、念波を送ってますのね?
「それでレオは今日、一日その姿で過ごされるつもりですの?」
『うん。リーナに抱っこしてもらうのいいね!』
「そ、そうですの?」
レオったら、爽やかな口調で妙なことを口走ってません?
年上みたいに私をリードしてくれるいつもの姿は無理をしていたのかしら?
『いや? 違うよ。リーナがこのぬいぐるみをギュウギュウ大事そうに抱き締めてたから、僕もしてもらいたいと思っただけ』
「それくらいでしたら、いつでもしてあげ……」
そうですわね。
出来なくなってますわ。
ちょっと前は私の方が背が高かったので自信をもって、年上としてのアピールも兼ねて、私が抱き締めていたのです。
今はレオに抱き留められて、たくましい腕に抱き締められていますもの。
嬉しいのですけど、それだけでは満たされないこの複雑な気持ちは一体、何なのでしょう。
『そういう訳で一日、よろしく!』
「わ、わかりましたわ」
『もう少し、このままでもいいかな』
「は、はい……ひゃぅ、あんっ。だからぁ、変な動きはやめてって」
素肌に直接、もこもこした純毛でスリスリされるのがいけません。
変な気分になりそうですわ。
気持ちいいのですけど、その気持ちいいとはまた違うのです。
性的な快感に似た何か、こうゾワゾワとしたものがくるんですもの。
結局、レオが飽きるまで服を着られませんでした。
このふんわりとした肌触り、癖になりそうですわ。
どうしましょう……。
『リーナ、なんだか、疲れてるね?』
「やめてって、言ってますのにレオがずっと、するからですわ」
『リーナのやめてはやめないでだからなぁ』
「くっ。否定しようにも出来ませんわ」
レオうさはそんな表情が出来ないはずなのにニヤァと悪そうな笑みを浮かべた気がします。
微妙に遊ばれている気がしてならないのですけど。
でも、約束は約束ですものね?
レオの希望で裾丈も袖も長く、肌見せのほとんどないシックなデザインの黒のワンピースを着て、彼をしっかりと抱っこして、お出かけなのです。
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